睨みつけ唾を吐き捨てる。
昔からまったく変わりのないの姿だ。
ここまで変化を見せない人間も珍しいと秀吉は思う。
それと同時に少しだけ自分の事も振り返ってみたがすぐに止めた。
今、自分の話は必要ないのだ。
それよりも目前で唾を吐き捨てている間抜けな女の事だ。
小さな身体を引き摺り血の混じった唾液を吐き捨てる。
最初に出会った時も同じ事をしていた。
「何見てんのよ秀吉」
「・・・見てねェよ」
「邪魔なのよ」
「ろくに歩けもしねェじゃねェか」
よろけるは秀吉の腕を払い膝をついた。
この女は笑える程度に甘えを知らないのだ。
その結果自分がどんなに傷つこうとも構いはしない。
悪い獲物を手に取り振り回しそうして傷つける。
あの時は秀吉も確かに同意した。
この世なんてこんなもんよ秀吉。
の言葉を否定する事が出来なかった秀吉は心の中で舌打ちを繰り返した。
「今に死ぬぜ、お前」
「何が」
「マサに会いに来たんだろ」
「何が」
「あいつならいねェぜ」
今日は半ドンで帰りやがった。
マサの馴染みらしいこの女が嫌いだっただけだ。
手のつけられない割に最終的な終結の場所がマサに落ち着く道理が納得出来なかった。
マサに逢えないと知った瞬間の顔。淋しそうな顔をするんじゃねェよ。
「別に・・・」
「いつまでも甘えてんじゃねェぜ」
「それは、あんたも同じでしょう」
「ふざけんな」
「あたしもあんたの事、嫌いよ」
そりゃよかった同じ気持ちじゃねェか。
腹の中でそう吐き捨てた秀吉はに背を向ける。
マサに対しここまでの価値を見出したは自分と同じだ。
だから秀吉とは相受けられない。
「嫌な男」
の言葉が風に広がる。
だからが訪れた事なんてマサに知らせる義務はない。
三角関係かよと一見思いがちですが(予想外の展開に!)