天使の輪

痴話喧嘩なんてものは傍で見るにも馬鹿馬鹿しいものだ。
それはマサの見解。
今現在そう、
リアルタイムでそんな光景を横目にしているのだから。
秀吉との痴話喧嘩に遭遇したのは五分前の事だ。
久々にレコードでも探索しようかと街に出たのが運の尽き。
の好きそうな―
それでいて秀吉の嫌がりそうな雑貨やの前で
既に臨戦態勢に入っていた二人を見つけた。
マズイところに居合わせたと感じたマサは
すぐに踵を返そうとしたのだが
運悪く人ごみに押されステージのまん前に出てしまう。
と秀吉は一瞬こちらに視線を向けたが何も言わず戦闘を続ける。


「・・・」


どうやら秀吉はそもそも外に出る気がなかったらしい。
が無理矢理連れ出したというところか。
無理をして付き合ってやったのにどういう事だと主張する秀吉と
もっと楽しめと喚く―解決の兆しが見えない。


「んなクソ暑ぃ日によ」
「だから中に入ろうって」
「帰りゃいいだろうがよ」
「なっ・・・!」


汗だくになりながら
そんな他愛もない痴話喧嘩を見ている自分に嫌気が差したマサは
案外人目を集めている二人から徐々にフェードアウトする。
彼女が欲しいと思った。

マサ、受難の巻。