DEVIL

「あんた何か要らないわ」
そう言った は少しだけ下品な笑い方をして唾を吐いた。
だから晋助は青い気持ちを無理に飲み込んだまま席を離れたわけだ。
まあ、それは昔の話。
きらびやかに着飾った彼女の姿は動乱に紛れ
いつの間にかすうっと風の如く消えてしまったわけだし
そんな彼女を捜さなかった理由もない。

年齢不詳の気が強かった彼女の実年齢を知ったのはつい最近の事だ。
自分と大して変わりはしなかった。笑った、僅かに。

「なぁにやってやがんだ?なぁ、おい・・・」

紛れもない独り言を吐き出し片目が疼いた。
雑踏と化したこの国が嫌いなだけだ。
そうしてそんな国に紛れ込んでいるあの女が
酷く醜く感じられただけだ。
頭の中だけの記憶が美しく装飾されてしまっている。
だけれどそれが真実だと思う。
きっと全て頭の中の映像だけが真実となる。真実に。
少しだけ気持ちが高ぶっているようだ。少しだけ。




「で、あんた何やってんのよ」
「神楽はどうした?」
「さっき何だっけ、あの沖田ってのと言い争ってたけど」
「あー」

銀時の顔が大惨事を引き起こしている。
まあ何かしらの悪戯を施されたのだろうと思い
は視線を逸らす。笑ってしまいそうだから。
痛み傷つき病んだを拾ったのは銀時であり
一旦は離れた関係も戻る。
は新しい生活を手に入れ生きなおしているのだ。

「甘味、食う?銀時」
「マージでぇ!?」
「買ってきたげるわよ」

そうして背を向けたに赤黒い影が見えたものだから
銀時は少しだけ息を飲んだ。




「あんた何か要らないって言ったでしょ」
「退屈だぜ、
「あんた何か要らないのよ晋助」

穏やかな海はじきに荒れ狂う。

「昔みたいに愉しもうぜ、なぁ」

あんたの目が戻らないのと同じ、あたしも二度と。
そう言いかけたは刀を佩いていない事に気づき
平和ボケにも程があると、だけれどそれで構わないと呟く。

「腑抜けになりやがって」

高杉の声だけがやけに響いた。

高杉出て来ないかなあ、本誌。