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昔こそ阿含辺りと頻繁につるんでいたもので
我ながらあの頃の自分は最低な人間だったと思う。
金だけを目的に人を陥れ(俗に言うオヤジ狩りなんてのもやっていた)
連れて歩く分には見栄えのいい男を落とす事に精一杯。
似合いもしないブランドに着られ大声で叫ぶ。
気に入らなければすぐに手を出していたしその点では
阿含と気が合ってもいたのだろう。
互いに決して気を許しあわない関係だった。
それから少しだけ時間が経過し少しだけも落ち着いた。
阿含と距離が出来た事が一番の理由だと思う。
何度か寝た。身勝手なセックスに振り回されただけだ。勘違いと共に。
何故昔の事を今更思い出しているのかといえば又しても
悪い蟲が騒ぎ始めているからだ。
夜中に突如暴れだす性質の悪いモンスター。
本当は何が理由なのか分かっている。助けてよ。
元々余り好きではないアルコールを電柱の影に吐き出した
壁に手を付きながら歩き出す。行先は一つだ。




「・・・何やってんだ糞女が」
自室ドア前にて酔い潰れ泥酔している女が一人。
蛭魔は身動き一つしない女の頭を軽く小突きぼんやりと見下ろす。
日が昇るまでにはもう少し時間がある。



エクステのついた睫がゆっくりと動き蛭魔を捕らえる。
懐かしい感じのするような、背筋が冷えるような眼差しだ。
あんたのせいよ、助けなさいよ蛭魔。
そう言っているようだ。
あいつの代わりなんてどこにもいやしないのよ。
代わりになってよ蛭魔。
そう言っている。確実に。

「酷ェ面してんな、相変わらず」

「入れてよ、蛭魔」

「嫌だね」

「・・・」

が笑った。薄く、軽くだ。
思わず表情が止まる。

「どうせ見捨てれない癖に、あたしの事」

そう言い又勝手に目を閉じたの隣に座り込んだ蛭魔は
一度として連絡のなかった携帯の事を思った。

ヒルマって格好いいよね。