アステリック

よく泣いている姿を見かけていた。
だからといって蛭魔の事、
話しかける事もなく慰める事もない。
はひっそりとこっそりとよく泣いていた。
そんな場面に遭遇してしまうのは単なる偶然だと思い込む。
そもそも偶然なんてないのだからその発想は馬鹿げている。
そもそもそういう人間なのだから阿含を愛する事は馬鹿げている。
馬鹿げていたのだ。




そんな彼女もいよいよ判断を下したらしく
(だからといって阿含側に不備が生じる事は確実にないのだが)
蛭魔もこれで泣く姿なんて辛気臭いシーンを
目の当たりにしなくてもよくなったと思い出したあたりだ。
そもそもアメフトに関する生活が九割を占めるライフスタイルに
これ以上余裕は見出せない(それこそ阿含ではないからだ)。
他校の女と帰る阿含の姿を目の当たりにした
(それこそ馬鹿らしいが)
立ち尽くしている現場なんてものに遭遇してしまった辺り、
偶然の神様は思い違いをしているらしいと予測する。

「糞女」
「!蛭魔・・・」
「何見てやがんだ」
「別に、何も」

ユラユラユラユラ、幼い心が揺れている。
傷なんてものは完治しないものだ。
心に限りは。
同じような傷を、
それよりも酷い傷を受け瘡蓋を作成し隠していくものだから。

「暇なら付き合え、糞オンナ」
「は!?」

彼女を覆い隠すほど強大な闇から助け出そう。
逃げ出すのだ。
どの道知れればあの男は
の事をどう思っていようが取り返すだろう。
まだまだ揺れる彼女の心はどちらにも簡単に転ぶ。

「まずはルールを完全暗記しやがれ」
「はっ?」
「出来ねェんなら泣きまくって化粧の落ちた手前の写真を―」

同じ闇ならこちらに転べと言いたいまでだ。

今デスノート(映画)観てます。
これ、中学時代ね。