チキンレース

「どうして信じてくれないのかしら」

の口癖はいつだってそれだ。
口調は少しだけ笑いながら、それでいていやらしく。
蛭魔の胸に指先を落としながらよくそう口走る。
一々相槌を打つ事さえ煩わしいので蛭魔はいっそ何も言わない。
からは化粧の匂いがいつだってする。

「糞オンナ・・・」
「名前で呼びなさいよ」
「うるせェ・・・」

お前は糞オンナなんだよ。
視線を合わせない内に髪を弄んでいれば毛先がひっかかった。
少しだけ痛がったはずいと顔を近づけ蛭魔に口付ける。
やっぱり化粧臭くて蛭魔は目を閉じた。




裸になる行為を余り恥らわない女だ。
あんたの性格なら女がリードするとか絶対嫌な癖に。
はそう言い笑った。
だから彼女が心底感じているのだとか
確実にイっただろう、だとか。
そんな事は当の蛭魔には分からないわけだ。
遠まわしに自尊心を痛めつける女。

「なぁ」
「んっ・・・何?」
「あんた本当に感じてんのかよ」
「・・・ふ、」

はそう吐き出したっきり顔を背け
(恐らく笑っているのだろう)
少しだけ腹がたったものだから一旦休止。
勢い余り抜いてしまった蛭魔は後味の悪さを目一杯味わう。

「あんたいきなり何言い出すのよ」
「うるせェ、糞オンナ」
「あたしが愛してんのはあんただけよ」
「うるせェっつってんだろうが」
「・・・ったく」

変なトコだけ子供よねェ。
だっただろうか。
はそんな事をぼやきながら蛭魔の性器を含む。
一瞬ゾクリと冷えた背中に舌打ちしながら
諦めたように目を閉じれば鼻先を化粧臭さが翳った。




この匂いが消えないんなら愛してるなんて言うな

同世代ってのが書けないのは
すげえ好きだから、
若しくは気に入ってるから(あたしに限り) 幸せだな、と思ってます。