すべては灰燼に帰す

何故ならば日の光りにあたれば
きっと息絶えてしまうからだとギンは思い
どうしてだろうと思う。
あの娘を愛していると思うこの気持ちさえ
余りにも不安定であり確信が持てないからだ。
曖昧なものが嫌いだから。
白と黒をはっきりさせたいから。
全てグレイでつくられていると思うから。
矛盾している。

だから暗闇の中ゴソゴソと動き回り時に休み
そうして呆けるのだ。
ぬっと顔を見せた際のあの顔を。
少しだけ息を詰めたの顔。
同時に覚えた慟哭。いけないという感情。
抑えられぬもの。一つ。二つ。
愛しているとゆっくり呟く己が唇、
そうして乾いていく唇、暫、暫。
斬れぬもの。心。折られた。

「思うんよ、ボクなんかは、特に」
「―何?」
「耐えられへん」

折られた心の修復なんて出来はしない。
何故心折れたのか、真相は闇の中。闇はギンの中。

「それと、この状況の繋がりはどこにあるの」
「昔っから思うんよ、酷く、虚し」
「悪いけどギン、あたしを待ってる人がいるわ」

輝かしい二人に祝福を。
祝福だなんて温かいものに触れた試しがない為
やり方が分からない。
言い訳でも結構だ、構いはしない。
手は出さない、触れない。
触れたい。僅か頬に口付けるだけ。
髪を優しく撫でるだけ。
逃げないのはお前や、
誰も引きとめてないで。

「ずっと続けられる道理はないでしょう」

いい加減、子供じゃないんだから。
要はがやけに割り切っていただけの事だ。
割り切れなかったギンが悪いのだろうか。
良し悪しで判断出来るものなのだろうか。
そうしてしまっていいのだろうか。
は自分を責めているのだろうか。被害妄想か。

「何でよ」
「何が?」
「なァ。何でお前はそんな、」

なかった事にしてしまおう。
そうして厚く深い壁を作る。
そうやって生きてきた。
この生き方に間違い等一つもないはずだ。
何故なら必ずだから。必ず間違いはないから。愛しているから。

「―何?」
「立ち、

見上げたギンが酷く大きく聳え
はやれやれ、ようやくきたかとその時を待ち構える。
恐らく随分前から分かっていたのだと思う、
頭か胸か、何れにしろ奥の方では。
視界の隅に待ち人の影を見た。見ていない振りをした。
彼は全てを知った上でそれでも待ち続けるのだろう。
馬鹿な男だと思う。皆哀れなのだ。

「手を貸して頂戴、ギン」
「ええよ、お嬢サン」
「あんたの癖、それ悪癖だわ」
「知っとるよ」
どうしても治らんわ。
立ち上がれば腰から引き寄せられる。
すっと伸びた背筋の先に待ち構える眼差しを直視すれば
全てが壊れる音が聞こえた。
襖の向こうでは祝杯を挙げる音が響いている。

企画に参加させて頂いた時(唐突に)
出させてもらった話です。めでたくもねえ・・・