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(ふしだらな幸せは全部あげる(UA)
あんたにだったら全部あげる、身体も心もあんたが欲しいっていうんなら全部。全部全部くれてやるわよと囁いたの瞼は小刻みに揺れていた。ねェあげるわよ、お願いだから。要らないとは言わせない。


たのむから僕をなぐさめて…(UA/喜助)
ふざけんじゃないと思わず口走りしまったと思った時には遅かった、なんてのはよくある話だ。挙句勢い任せに動いた右の腕、それの甲が頬までも殴っていたとしたら弁明の余地はないだろう。はどうしていいのかが分からず只黙った、頬を叩かれた喜助も黙っていた。二人とも黙っていた。


痛い暇を恋と呼ぶ様に(椎名林檎/チャド)
まさか恋なんてものに食い潰される日が訪れるとは夢にも思わなかった。そんなものは自分以外の他の誰かの出来事だろうと思っていたし馬鹿らしいとさえ思っていた。そんな痛みなんて必要ないじゃない生きていく上では、はそう言っていたような気がする。あの人がいなくってもあたしは大丈夫簡単に生きていけるもの。そう言った刹那姿を追う自分に嫌気が差す。一護と一緒に帰っているチャドを見送るこの部屋は西日に照らされている。


猫の様に この僕を捨てないで(黒夢/ゾロ)
笑った。それこそ気が違えるほど笑った。やり遂げた感としてやったり、そんなものが大量に押し寄せ笑いとして放出された。愛された、それが笑いの集大成だ。馬鹿め愛しやがって、が笑った。きっと中身は同じだったのだろう、同じ事を考え同じ事に怯えていた、とゾロは。互いがどういう経緯を経てそんなに猜疑心ばかりの強い人間になったのかは分からないが兎に角それが現実だ。生命線を握り合えばいい、そうでもしていなければ怖くて怖くて愛する暇がない。


いつもどおり 僕以外のなにもかも(稲葉)
皆が死んでしまったのだからもう誰も訪れはしないだろうと思っていた。この部屋には。とうとう一人になってしまったと思う反面ガクソやあの辺りからの監視がきつくなっている現実に嫌気が差す。どうにかして逃げ出さなければ自分も死ぬ。だからといって方法は見当たらないのだ。そんな思いで生きていくのは億劫他ならない。ふと顔を上げれば弖虎が呆れた様子で自分を見下ろしていた。ああ、こいつだけが範囲外だ。


誰とでも寝るような女の子(BJC/江夏)
よく色んな女から叩かれた。色んな男達が笑いものにしている様子も伺った。それでも改めようとしなかったのは悪い事だと思っていなかったからだ。今も特に思ってはいない。好きな時に好きな奴とヤって何が悪いのよ、相手にされない女より全然マシじゃない。はそう言うが確かに自分で言うだけのものではあると。腰の軽い可愛い女なんてブランドは軽薄な男にしてみれば最上級だろうと。は短いスカートのまま大きく足を組みなおす。江夏、相手してあげようか。グロスのてかる唇でそう笑ったに江夏はどういう意味か言いようのない笑みを返した。


どうにでもなればいい こんな世界なんて(BJC/ジェクト)
どうにでもなったらいい、いっそ分かってるんなら壊れてしまえばいいじゃない守る事ないわ、はそう言い泣き叫ぶ。ジェクトはそんなを只眺めていた。俺をそんなに愛しちまったのか、そう言えばが又泣く。あたしを守ってよ、世界なんてどうだっていいじゃないあたしを一人にしないで、あたしを守ってよジェクト。そういえばかみさんもそんな女だったなあとどうでもいい事を思い出した。


もしも 愛が物足りないのなら
私は 海を飲み込もう(AJICO/シャンクス)
ねえ、一体どれだけ愛すればいい?どれだけ愛せばいい?無言のまま死ぬほど求め続けるシャンクスを眺める。どれだけ愛してもきっと彼は満足しないのだろうしだからといって要求はしないだろう。只普段のまま優しい眼差しでを見つめるだけだ。その眼差しを感じればは居た堪れなくなる。もっと愛さなければならないのだろうかと。まだまだ愛したりないのだろうかと。時折刹那な気分にさえ陥る、この海がシャンクスを愛しているものだからの愛はまるで物足りないように思えるのではないだろうか。愛し尽くし出来る事なら殺してしまいたい。


君を縛り付けて 俺の好きにしたら
君は俺の事を 嫌いになるだろうか(JUDA/サンジ)
どうかな。ぼんやりと海原を眺めながらふとそんな事を思う。を縛りつけ自分の好きにする、とても残酷で我侭な思いだとは思うが究極の欲望だとも思うのだ、サンジにしてみれば。自分だけではないとも思う。はどちらかといえば奔放な女だ、気があるないにしろ誰とでも分け隔てなく付き合う。他愛もないヤキモチなんて妬きたくもないし苛々するのは極力避けたい。今夜ベッドの上でを好きにしたらは自分の事を嫌いになるのだろうか。カモメが鳴く。


時がただ僕を刻み続ける
せがむように君を抱きしめた(LOVE PSYCHEDELICO/浦原喜助)
タイムリミットは刻一刻と近づいている、この胸の中でだけ。だからはそれを知らない。どれだけ切羽詰っていようとには関係のない事なのだ。喜助に抱きついたはとても幸せそうで喜助も幸せだと感じる。小さな身体をきつくきつく抱き締めればが微かに笑った、幸せだと思った。幸せだと思う。愛していると。口にすればはむっとした顔をする、それでも喜助は囁く。少しだけ必死に聞こえただろうか、もう気にする必要はないか。

小咄ばかり