スカスカのその心

その瞬間全てが崩れ去ったとしても
互いに異存はなかったわけで、
故にがそんな言葉を口走ったと勘繰られても仕方がない。
止めたかったのかも知れない。それこそ互いに。
口火を切ったのはだった。
兎も角どこか遠い場所へ行こうと。

「倦怠期ってこういうのじゃないの」
「へェ」
「あんたといたって全然楽しくない」
「へェ」

じゃあ前みたいに他の男と
どこにでも好きなトコに行けばいいんじゃねえの。
なんて腹の中は決して見せない。
では何故一緒にいるのかと問われても
明確な答えは出てこないのだ。

最初の頃、他の誰かからを奪った感覚、快感。
腐った独占欲。甘い汁は随分吸ったのだ。
もうカスしか残っちゃいないだろう。
それでもしがみつくように執着している理由は何だ。
未だに分からないからここにいるのだろう。

「あ」
「何よ突然」
「あぁ・・・」

分かったと呟いたサンジはあの場面を反芻した。










ぐっと握り合った掌に力を込め
どうにか逃げてしまおうと息を吐き出す。
酷い雨が前前日から降り続いていて
その影響か増水した海は荒れ狂う。
商売中のはそのままの姿で飛び出しサンジの手を取った。
まあに捕らえられたと思って間違いはないだろう。
今更本気じゃないと言える場面ではないのだから。

巨大な力に愛されたは分不相応な自由を夢見た。
誰もが当然のように得ているものだと思う。
単ににだけ許されなかっただけだ。
その自由の入口にサンジを選んだ。

「どうしよう」
「何を?今更じゃね?」
「あいつ」

雨粒に叩かれるの声は酷く歪んでいた。
ガチガチと奥歯が鳴っていたのは寒いからだろうか。

「お前はもう帰らねェかって」

笑いながら。
指先にもう一度力がこもる。
の顔をまともに見たわけではなかったが
恐らく彼女の表情は。

「今更戻れねェよ、
「分かってる」
「行くしかねェ」
「あんたにとっては」

他人事かしら。
そう吐き捨てた
そんなわけはないさ。
そう投げはしたものの
守ってあげるだなんて言葉は微塵も浮かばなかった。









「なーんか噂なんだけど」

夕食の場でナミが何気なく口にした噂は
あの彼―四皇の彼の噂であり
は飲み込みかけたサンジ特製のソテーを
吐き出しそうになる。
思わずワインで流し込めばグラス越しに
馬鹿馬鹿しいと笑ったサンジが映りやってられなくなった。

あの時豪雨の中逃げ出したものは一体何だったのだろうか。
そうして今じかに手にしているこれは一体何と言うのだろう。

あの男はシャンクス。
本誌に出そうだよ!やったね!
アンケ。まずサンジ(こんな結果に)