薄情な純愛ストーリー









そういう男だと知っていた。
生きる目的が独善的な為、どんな手段を選ぼうとも自尊心は傷つかないのだ。
だから毒も盛るしつけ狙う。弱ったところを執拗に狙う。
生き物としては至極正しいのだろうが、
人として気持ちの悪い行為を喜々として選ぶ。
別にこいつだけに限った事ではない。そういう輩に囲まれ生きてきた。


物心のついた時には見ず知らずの男に弄ばれ、
どうやら母親はそれで糧を得ていたようだったが詳しくは知らない。
ともかく、 の身体はすっかりと弄ばれ過ぎ、心は置き去りのままだった。
自身の生まれを恨んだ事もない。
それ以外の世界を知らなかったからだ。
世界はこういうものだと思っていたし、クソみたいなものだと思っていた。
ある程度成長し、はっきりと犯された際、その痛みと同時に明白な殺意を覚えた。


何れお前を殺してやるよ。

頭上で間抜けに動く男を見上げ、漠然とそう思う。
殺す事に躊躇はなく、自分から奪っていったもの全てを
取り戻そうと自ら血に塗れた。


「・・・巳虎ぁ」
「いいじゃねぇか、
「ふざけた事言ってんじゃないわよ」
「今日俺は機嫌がいいんだよ」


身内に毒を盛るこの男の心境は計り知れない。
四肢が痺れ、両の足で立つ事が難しくなり倒れこむ。
意識ははっきりしているし、耳も生きている。眼もだ。
身体だけが自由を奪われゆく。
それでも全てではない。少しだけ、少しだけ動く。
という事は致死量でないという事だ。
命を奪うつもりではないが、毒を盛った。
吐き気がする。


「触るな、クソが」
「動かないだろ?身体」
「ふざけ」


この男の眼差しは、そういう眼差しだと知っていた。
昔から見慣れている眼差し。蔑み犯す眼差しだ。
巳虎の祖父である、能輪美年にスカウトされ
立会人になった を当然のように付け狙う。
この男の複雑な思い等知らない。
自身から奪った奴らは全て殺したが、生憎この男はまだ殺す事が出来ない。
私は、この男に敵わない―――――


「俺ァお前の事は嫌いだよ。じいちゃんが気に入ってるし。だけど」


崇拝する祖父に目を掛けられる相手は気に入らないが、
祖父の思いには添いたいというところか。
相変わらずこの男の思いは歪んでいる。
既に半裸の を見下ろし、巳虎が笑った。
この男は最初からこうで、だからあたしは、


「俺は、こういうのが好きでさ」


こういうのじゃないと興奮しねェんだよ。
身動きの取れない女、祖父の気に入りの女。
この条件が揃ってようやく興奮するらしい巳虎の精神はどうかしている。
だけど、別にこの男に限った事ではないのだ。
どいつもこいつも、どうかしている。クソが。


ロクに愛撫もせず、巳虎の性器が肉を裂いた。
決してこの男が感じる事のない痛みを耐える為に息を殺す。
気づいたのか否か、唇を割り、巳虎の舌が入り込んできた。
唾液、呼吸。
耐えがたく抗いたいが四肢に力は戻らない。


「声、出せよ」
「うるせェ」
「興奮させろよ」


なァ、
相変わらず巳虎の声はベタベタと纏わりつく。
これがこの男なりのクソみたいな純愛だとしても、
そんなものはまったくの無価値で、
依然 の心は置き去りにされたまま、巳虎自身でさえも気づかない。
体液の粘着質な音が響く室内には、空っぽの獣が二匹いるだけだ。





お久しぶりです!
お久しぶりっていうか、三年振りですね!
元気でした!ハイ!
三年放置からの嘘喰い復活って
こいつマジかよと 自分でも思ってます
しかも、復活後第一弾が巳虎だしこんな話だし
我ながら正気じゃねェなって…思っているぜ…?
巳虎が単なるど変態になってるんですけど、
彼の性感帯は祖父なので当たらずとも遠からずかなって…

すいませんでした(今後ともよろしくお願いいたします)
2015/09/10

NEO HIMEISM