『仕置き部屋』と呼ばれる部屋に幽閉され、早一週間。
窓のないこの箱は暗い。
何故いう事を聞かないのかと言われても分からないのだ。
そもそも、何故自分という人間は生きているのか。
それさえも分からないで今に至る。
生まれてこの方、人並みと呼ばれる人生を送った事がない。


「………
「………」


こんな暗い箱の中で四肢を拘束され横たわっているのだ。
『教育』と呼ばれる仕置きが行われる間のみ拘束は外される為、
四六時中自由がない。
それにしても今回の仕置きは随分と長丁場だ。


「撻器様がいらしたぞ」
「…」
「おい…!」
「やめろ、丈一」


左目の上、瞼の部分が切れ血が垂れている。
視界も悪い。
枷がついたままどうにか身を起こし、視線を上げた。
あばらにヒビが入っているのだろう。呼吸が苦しい。



「元気か?…」
「…はぁ、まぁ」
「おい、丈一。顔に傷はつけてやるなと言ったろう」


可愛い顔が台無しだ、可哀想に。
撻器はそう言い、まじまじとこちらを見つめる。
背後に立つ丈一の殺気で息が止まりそうだ。
事がここまで大きくなったのには理由があった。










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自由が欲しくなった、というのが理由だったのだろう。
一人で出歩く事さえ許されていない身分が息苦しく、
窓の外に出てみたくなった。よくある話だと思う。


問題だったのは、が賭朗の、
事、丈一の懐刀だった事だ。
秘策中の秘策。
限られた人間にしかその存在さえ知られていない。
そんながいきなり姿を晦ましたもので、
騒動は大きくなった。らしい。


兎も角、はここから抜け出し街へ繰り出した。
行先など決めずに。
これまで丈一に連れられ出かけた際に
車の窓から見ていた景色へ足を踏み入れ、初めての匂いに驚く。
街は様々な匂いや音に溢れていた。


そのまま雑踏へ紛れ込み、人の波に流される。
どこにも居場所はないが、自由だけはあった。
そんな日々を2日過ごした時、思わぬ人物とすれ違った。
伽羅。
賭朗にいた頃、一度だけ遭遇した事がある男。
あの賭朗を抜けた男―――――


自分と重ね合わせ、勝手に親近感を抱く。
そしてつけた。
伽羅は延々と街を歩き、とあるビルに入った。
そのまま入る事は躊躇われ、様子を伺う。
誰も来ない。一歩踏み出す。
伽羅。


「…おい、何で俺をつけるんだ?」
「…!」
「ん!?…お前は…」


伽羅は気づいていた。
壁にもたれ腕組みをし、を待ち構えていたのだ。
聞きたい事は山ほどあったのに、反射的に逃げ出した。
見知らぬ街、見知らぬ道を走る。


そうこうしている内に、どうやら丈一に見つかっていたらしい。
気づかない内に袋小路へと追い詰められていた。
対峙した丈一は怒り心頭といった有様で、
殺されるのだろうかと思ったが別に構わないと思えた。
あの箱に戻るくらいなら、
自由を手に入れた伽羅がいるこの街で死んだ方がマシだと。


しかし願いは叶わず、
仕留められたは賭朗へと連れ戻され、
『仕置き部屋』へと収容された。


「なぁ、。自由が欲しいか?」
「…」
「なら、強くなれ。もっと、もっと、強くなれ」


俺がより、お前を手放したくなくなるように。


「…………」


目の前にぶら下がった自由を取り上げられ、
すっかり疲れてしまっているは、
撻器の問いかけに応える事も出来ず、
只、辛うじて意識を保っていた。


このまま戦い、果たして何を得るのだろう。
目を閉じてもどうせ伽羅の姿が蘇るだけなのだ。
眩い、あの、自由。
今一度伽羅に会い、知っていると伝えたいが叶うだろうか。


目の前では撻器が様子を伺っている。
撻器は長い時間、様子を伺っていた。








不可能の可能性





スタートもゴールを決めずに
書き出すとこうなるという典型
撻器さま、丈一(初!)、伽羅という謎三つ巴
主人公は丈一の部下(とっておき!)です
もうへろへろな主人公をただ見てるだけの撻器さま萌え
続きがありそうな感じですが、恐らくあるでしょう
自由と憧れの象徴、伽羅ですからね。。。

あと、『仕置き部屋』という単語で
絡ませるのを判事か丈一か超悩んだ

2015/09/17

NEO HIMEISM