永遠なんてものはないのだと君は笑う











日が完全に落ちる前に避難小屋を見つける事が出来た。
随分な幸運というやつだ。



冷えの為、満足に動かなくなった指先を温めるべく暖炉に火を起こす。
そんな当たり前の事でさえ出来ないのがだ。
この女はこれまでどんな暮らしをしてきたというのか。
当然、湯も沸かせず、軽食など以ての外だ。



船ではありえない事なのだが、全てをシャンクス自身が行った。
我ながら器用なものだと自画自賛した。
貯蓄庫にあった食料品を使い、具の少ない野菜スープを作ったが、
ふと気づけば(どうやら疲れていたのだろう)
薄手の毛布に包まったはソファーの上で寝ていた。



随分無防備なもんだと呆れたが、それはそれで嬉しくもあった。
このと出会った頃には考えられない状況だ。
眠るの隣に腰かけ、自分で作ったスープを口へ運ぶ。



「…不味いな」



味がしねェと笑った。










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そんなに生き急いでどうするんだと声をかけた。
確か、それがファーストコンタクトだ。



新世界に飛び込んで来たルーキーの一人。
色んな輩の思惑が交錯し、とりあえず一斉攻撃を受けた船があった。
有無をいわせないその攻撃にターゲットは離散、
船長の首だけが無残に晒される事となった。



その船に乗り合わせていたのがだ。
非道な事に、全てはの不在時に行われた。
彼女の力を恐れた故だ。



そいつは余りにも惨い所業だと感じた者も少なくなく、
別件で諍いも起こる。
一先ずシャンクスは、傍観する立場だった。



全てが終わった後、晒された生首の前に立ち尽くした
声もなく只、涙だけを流していた。
下手に近づく事も出来ないような覇気を纏い、そこにいた。
その背中を見ていた。



それからのの行動は随分、迅速なものだった。
離散した仲間を探し情報を得、一人一人に報復する。
その執拗さは病的で、それでも確実だった。
喜怒哀楽の全てを忘れ、まるで機械のように報復だけを繰り返す。
そんな姿が余りにも哀れで、目が離せない。



ベン達には悪趣味な真似をするなと再三、諫められたが止められない。
まあ、そんな真似をしていたから、あの窮地に立ち入る事が出来た。



深手を負ったが蹲る背後に立ち、上記の言葉をかける。
うるせェと、振り返りもせずには吐き捨て倒れ伏した。
そんなをひょいと拾い上げ、船へと連れ帰る。
うんざりとした顔のベンをどうにか説き伏せ、治療を行った。



数日後、目覚めたはひと暴れこそしたが、
最終的には感謝の意を示した。
そんな気真面目さが恐らくは徒になる。
そのまま(こちらは何事かしたかったが)
彼女は同じ旅へ向かい、今に至る。



が旅立った後、治療にあたった船医が耳打ちした。
彼女の記憶は何れ欠落する。
全てを忘れてしまうでしょう。
だから。



「…何それ、何で一人で食べてんのよ」
「お前も食うか?
「それにしたって寒いわね」
「随分、吹雪いてるからな」



治療法は未だ見つかっていない。
それにに知らせてもいない。



只、忘れられて堪るかという気持ちで見つけ出した。
記憶の欠落はどこから発生するか分からず、
次に目覚めた時には、こちらの事を忘れてしまっているかも知れない。



にとっては、全てを忘れてしまう方が
幸せなのかも知れないと思うが、
それではこちらの気持ちのやり場がなく、
轟轟と唸る吹雪の中でたった二人、身を寄せ合うだけだ。



【明るすぎた太陽の嘆き】の続きです
思わず暗い感じに…!
シャンクスもどんだけ振りに書いたんだと
2017/05/01

水珠