醜い汚い憎い 愛してた、








お前の事を愛してるっていうのは嘘、
だけどまさかそんな言葉、真に受けてたわけじゃないよね、
だってこれは勝負だし、それに相手はこの俺だよ?
そう簡単に心を持ち出されてどうするの。
あんまりにも無防備だから、とりあえず手を出してみたんだけど、
まさかそんなに簡単に心を開いちゃうだなんて、逆に驚いてるよ。俺は。



こんな男を後生愛し、
何もかも全てを捨てるだなんて馬鹿な真似だ。
彼の喜ぶ顔を見たいが為に命を危機に晒し(それも幾度もだ)
賭朗の制裁を受けるギリギリのラインで生きていた。はずだ。



「…どうした、お前」
「あんた、前に言ってたわよね」
「何だよこんな時間に…入れよ」



シャワーを浴び、休む寸前だった巳虎は多くを聞かない。
少なくとも察する事が出来たからだ。



夜半過ぎにアポもなしに訪れたこの女は、稀に見るバカだ。
これまでの出来事も、これからの出来事も、全ての選択を間違っている。
そうしてその事に本人は気づいていない。



「何か飲むか?」
「…いらない」
「お前なぁ」
「あんたの言ってた通りになった」
「!」



マジマジと顔を見つめれば、どうやら泣いていたようだ。



「言ったろ、真に受けるだけバカを見るって」
「そうね」
「でも、まあよかったんじゃねェの。
 お前、これ以上立ち入ってたら、制裁されてたよ」



俺に。
それは言わない。



「他の奴にはまだばれてねェんだろ」
「多分」
「ならいいよ」



こうしてこの部屋に連れ込み慰め、そうして又リリースする。
そんな何にもならない遊びの最中に、
嘘喰いにまんまと心を奪われたバカな女を許す事は出来ないのだ。



きちんと愛しているわけではない。
だけれど、奪われるのは癪だ。
あの男の目的は余りにもはっきりとしていた為、
こうして待つ事が出来た。
案の定、を利用出来るだけ利用してくれた。



予想外だったのは、しゃぶり尽くす前に
はっきりと関係を終わらせるだけの優しさを持ち合わせていた事だ。



「可哀想にな、
「…そうかな」
「全部嘘だったんだろ」
「そうね」
「騙されてたって事だ。悲しいだろ、そんなの」
「…そうなのかな」



未だ心が定まっていないを背後から抱き締め、
一つ一つ、心の傷を抉る。
この部屋で行われる悪趣味な遊びは終わりを迎えず、
又、心だけが蹂躙される。
それを愛と呼んでも構わない。



すまんね貘ちゃん
巳虎も何かひっさびさに書いたなぁ
悪い貘ちゃんと悪い巳虎でした


2017/05/01

NEO HIMEISM