キャラメルロック








「ちょっくらお世話になるわよー」
「帰れ」
「ローが完全に命を狙ってきてるのよ、匿って」
「知らねェー!」
「だからって本気でやり合うわけにもいかないでしょー?」
「だから、知らねェって、おい!勝手に入るな」



この女を女として見るという事自体が
正直まったく理解が出来ないわけで、
やはりあのローという男はどこか、
いや、まあ全体的におかしい男なのだ。


という事は、おかしい男とおかしい女が
どこぞで組んず解ぐれつ絡みあおうとも一向に構わないわけで、
ここでの問題は只ひとつ、この俺にマジで迷惑をかけんな。



「とりあえず、ローが来てもいないって言ってよ」
「だからって侵入してんじゃねェよ!」
「ねえ、ちょっとキラー!話聞いてよ!」
「おお、どうした
「こいつはいつもどうかしてんだよキラー!」



他人の船内にズカズカと侵入する
どんなタイミングでもトラブルを持ち込む。
分かり切っていた事だが毎度毎度、何なく受け入れてしまうもので、
こうして厄介事を抱え込む羽目になるのだ。



「ったく、毎度毎度…!」
「まったくだな、何で毎度毎度、あいつは手前んトコに逃げ込みやがる」
「!!」
「邪魔してるぜ、ユースタス屋」
「お前…」



当然の物知り顔でそこに存在しているローに驚くも、
この男の性質を考えるとやりかねない真似ではある。
だからって俺の船には上げねェぞ。



「OK、ちょっと待て。ここではやり合うなよ」
「そんな気はねェよ」
「っていうか、お前も何であいつにそう執着するんだよ、
 だって、あいつだぜ?」
「俺は仲間にしたいんだが、まあ、手籠めにもしたいな。そういう事だ」
「いや、どや顔で言われても全然わかんねェ」
「だったら逆に聞くけどな、あいつは何でお前にそう執着する」
「は!?」
「いや、だってそうだろ。
 何かあったら速攻でお前のとこに逃げ込むし、
 何だかんだと名を馳せる割にいつまで経っても一人だろ、あいつ」
「ん?」
「ここまでくると、流石に核心に変わりつつあるぜ」
「んん??」
「お前、あいつと出来て」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
「出来、」
「ないないないないないないないないないない」



どこからそんな気持ち悪い話が出て来やがったと続けるキッドは、
ローの言葉を遮り立ち上がった。徐にだ。
そうしてでかい声で、出て来やがれと叫び、
船内へかけて行った。


まあ、だからだ。
このユースタス屋の態度を見るに、
ユースタス屋側には一切の下心はなく
(それもそれでどうだという話になるが)
が好きにやっているだけなのだろう。
そもそもが真摯さなんて欠片もないような女だ。
己の目的にのみ忠実で、欲望を抑える術は持たない。


そんな奔放な女に心を奪われたとなると、
こちらも心は酷く不自由になるもので、
いよいよ決着をつけたいところだがこの有様だ。
居心地のいい場所に甘えるあの女の真意はどこだ。



「こらァ!さっさと出て来やがれ!!」
「キッド、ドアが壊れるぞ」
「ってか、俺の部屋に籠城してんじゃねェよ!」



断片的に聞こえて来る言葉はそんなもので、
傍から見たら只の痴話喧嘩だ。


腸は煮えくり返るが今のところ打つ手はなく、
このもやもやの正体を探しあぐねるだけだ。




当サイトで頻繁にある、
キッドとロー話です
本誌とは絶対に相容れない、
こういうキッドとキラーが好きで、、、

2017/8/14

蝉丸/水珠