一番になれなくていい








ベットの中でだけ素直なのね、
だなんて浮ついた言葉を耳にしたくてを呼び出した。
彼女はきっと断る事もなく、じきにここへ来る。
いつもの柔らかな笑顔をぶら下げて。


どうしたら彼女が自分だけに微笑むようになるのか、
これまで幾度も考えあぐねたのだけれど、
中々思い通りに事は進まない。


昔、伽羅と仲良さげに話をしている場面を目にした事がある。
客である自分相手とは違い、
同僚と話をしている彼女の姿は新鮮で、兎角腹が立った。
伽羅も伽羅であんな男の癖に、楽し気に笑いながら話をしていたのだ。


ちょっと待ってよ、
ねえ、何でそんな楽しそうに笑っちゃってるの?

正直、その姿を目の当たりにした瞬間、全て気づいていたのだ。
と伽羅の間には何かある。
例えば恋だとか愛だとかそういう類のもの。
何度か伽羅にカマをかけてみたがはぐらかされた。


その態度で逆にバレバレなんだけど。
毎度そう思うが自白を得る事が出来ない
。どう考えても俺の方がいい男なんだけど、
伽羅さんも確かにいい男だしなぁ。
何に惚れているのかがまだ分からず、
とりあえずは懐に飛び込んで聞いてみた。


どこがいいの?
そんな風に、ストレートに。
ねえ、は伽羅さんのどこが好きなの?
やり方としては確かに目も当てられない方法だ。
作戦もクソもない。
日がな本音を隠して嘘ばかりの生活を送っているのだ。
たまにはこんなやり口も許してよ。


少しだけ驚いたらしいは、やはりいつもの笑顔で答えた。
優しい所が好きよ。
そんな事を言われれば俄然燃え上がってしまうもので、
どんな手を使ってもをモノにしたいと気が狂いそうになったが、
感情的に物事を進めてどうする。
そもそも力任せにどうこう出来る相手ではないし、
どうこう出来る自分でもない。
入り込める隙間が出来ればと思うが、
目と目で会話をする彼らに今のところそんな隙間は生まれていない。


だからこうして、伽羅の不在時を狙ってを呼び出す。
立会人として。


もうじき彼女はそのドアを開け、中へ入ってくる。
そう、情けない俺は。
地道な努力を続ける他ないのだ。




焦がれ貘ちゃん。
相手は伽羅の彼女。

2015/09/22

NEO HIMEISM