こちらに一切、興味を示さない女を目の当たりにして幾数年だ。
我ながら、そんなに悪くはないと思うし、
自分で言うのも何だが、女には割かしモテているわけで、
やはり連れて歩くには申し分ないと思うのだが、
不思議とあのという女だけは、こちらを一切眼中に入れない。
賭朗に入った当初から、一目見た時から気に入っていたもので、
散々何だかんだと声をかけているものの、
これがまあ信じられない程に手ごたえがないのだ。
普通の女(まあ、ここでいう普通の定義も何だ、という話だが)なら、
好意の有る無しに関わらず、とりあえず先輩の誘いは断らないだろう。
最初の一度くらいは。
それなのに、この女はまったく厭わない。
誘いに乗らない。愛想も見せない。
それが半年前の出来事。
業を煮やした巳虎がどうにか画策し、自分の下へ配置した。
共有する時間が増えるごとに、流石にも観念したのか、
それなりの態度になった。
賢明な俺の賜物だと自負する。
そうしていよいよ訪れた運命の夜。
逃げ道は確かにこちらが潰したが、
も満更ではなかったのではないかと、今となっては思うのだが、
その直後から彼女は門倉の仕事に派遣されてしまい、
一度として顔を合わせていない。
おいおい、それってどうなの…。
あいつの部下って野郎ばっかだし、
そもそも何でがわざわざ手を貸さなきゃいけねェんだって話だけど、
まあ自身が立会人を目指しているわけだし、
経験を積む事は非常に有意義だ。
だからって何の連絡もないだなんて、あいつ随分冷たいじゃないかと、
そんな詰まらない事は言えないわけで、
何だか一人で悶々としているのだ。
あの、まるで夢みたいな一晩を思い出せば、
今ここにがいて、愛してるの一言でも
囁いていてもおかしくはないような、そんな勘違いが具現化しそうだ。
あの夜は突発的に意図的な偶然を装った。
まるで絵にならない舞台で、感情の赴くままに抱き合ったわけで、
それはそれで映画のようなインパクトはあるが、
余計にその場限り感が強くなる。
やはりちゃんとした言葉で真剣に思いは伝えるべきなのだと、
そんな事は分かっているが当のは戻らないし、
何だか今更、気恥ずかしい。
だけれどこうして、いつがやって来ても完璧に演出出来るよう、
バラの花なんて飾っている俺はやはりバカなんだろう。
やたらと広いリビングに一人、
まるで生活感のない部屋は己を象徴しているようで、
いつ会えるとも分からない女に思いを馳せるだけだ。
珍しく焦がれ巳虎
2017/09/04
NEO HIMEISM
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