あなたの代替は


きかないのです








ふと気づけば暗い場所にいた。
頭が酷く痛んでいた。
吐く息は白く、遅れて戻った感覚が最初に気づいたのは寒さだった。


目を閉じ、状況を把握する。
木の粗末な椅子に拘束されている。
恐らくこれから尋問を受けるであろう。


この状況は簡単に想像出来るもので、次は相手を考える。
覚えている記憶が酷く荒く、何かしらの薬物の使用も選択肢に入った。
相手は海賊か。
若しくは七武海か、若しくは―――――



「…ようやく目が覚めたかな」
「…大将」
「よォ、
「これは、どういう」



目前にいたのはクザンだ。
こちらに向かって座っている。


これは想像の範囲外、何故ここに彼がいる。
どうにか構築した仮定はあっという間に崩され、
その代わりのように思考が駆け巡る。
ここで目覚める前、一体何をしていた。



「俺は今から、あんたを説得する」
「…え?」
「その為の舞台だ」
「…」



徐々に記憶が蘇り、記憶を失う直前の景色を思い出す。
クザンとサカズキの決闘後、所属していた部隊は解体された。
クザン直属の部隊だったからだ。
ある程度の覚悟はしていた。


隊員はそれぞれ思う事もあったのだろうが、上層部の判断を待った。
何せ、海軍本部付きの精鋭部隊だ。
如何様にも使い道はあっただろうと思う。


希望を持ってこの海軍に入り、優秀な成績で試験を突破し、
精鋭部隊への道を掴んだ。挫折を知らなかった。
初めて配属された先はクザン率いる特殊部隊であり、
地獄の訓練の始まりでもあった。


自意識を潰され、意思を殺す。
全てを捨て、海軍の為、掲げる正義の為に生きる。



「あんたに大義はない。だったら俺についてきな」
「…」



正義の為に生き、海軍の為に死ぬ。
その価値観を叩き込まれた。
他でもない、目前にいるこの男に叩き込まれたのだ。
その男が今、囁いている。


総てを捨てろと。
総てを捨てろいうのか、お前以外の総てを。



「俺の部隊は解体される。
 良くて降格、そして辺境の地へ飛ばされるか、前線に送られるかだ。
 それに、厳重な監視下に置かれる。
 あんたみたいに大義がない兵隊は使い捨てにされるだけだ」
「…」
「あんたをそんな風に作ったのは俺の責任だ」
「そんな事は、」
「俺に従い、俺の命を待つ。あんたは、俺が死ねと命じれば死ぬ」
「…」
「だから俺はお前に乞う。お前の話を聞かせてくれ。
 お前が選ぶんだ、



解体後の配属先を見に行く途中の出来事だった。
突如現れたクザンに驚く間もなく、
彼は に強かな打撃を加え連れ去った。


十人程度の少数部隊の中で、一番真摯に大義がない女。
最も優秀な隊員だ。何色にも染まる。



「裏切れと言うんですか」
「…そうなるね」
「あなた以外の、何もかも」
「容易いはずだ、あんたには」



俺を裏切るより。
クザンはそう言い、決断を迫る。


きつく縛られた四肢は無意識に動く為、血が滲んでいる。
決断を迫るクザンは冷気を出し続け、 の身体を冷やしゆく。
知らぬ間に零れていた涙でさえ凍てついた。



「以上だ。あんたの意見を聞きたい」
「大将…」
「いいや」



もう大将でも何でもないね。
クザンはそう言い、名で呼べと囁く。
そうして、お前の総てを俺に寄越せと迫るのだ。





海軍を去った後のクザン萌えです
クザンが好きに作った自分の隊、隊員
クザンの悪い遊び




2017/10/07

NEO HIMEISM