さよならをいう君の手を引いた僕








随分と散々な姿じゃあねェかと、
男はそう言い歪んだ雨戸を力任せに開いた。


どうやらそれが窓なのだろうと、ぼんやりと予想はしていたが、
ベッドの枠に片手を拘束されたままだった為、確かめる術もない。


海桜石の手錠はから力の全てを奪いゆく。
四肢に力が入らず、抵抗する気力さえ失せた。


いや、それは嘘だ。
お目当ては最初から決まっていた。
その、よくない遊び。



「…相変わらず、救いようがねェな、お前は」
「何よ、そんな目で見るもんじゃないわ」
「どうかしてやがる」



完全にここがいかれちまってる。
埃臭い空気を入れ替えながら、ドフラミンゴは続ける。


手前の頭の中はセックスセックス、セックスの事しか入ってねェ。
確実に心が壊れてやがる。
お前のそれは病気だぜ、
この俺にも手の打ちようがねェ。


室内に日の光が差し込み、そこに蹲るの姿が露わになる。
ほぼ半裸で、体液に塗れたその姿。
外の光を嫌がり、顔を背けるその姿。
余りに薄汚く、生き物として最上だ。



「…何なのよ」
「準備しな、。仕事だ」
「冗談でしょう?これからが本番だってのに」
「悪ぃが、そんなに猶予がねェ。手前の相手はとっくに始末した」
「ふざけ」
「力づくで犯されてェなら、やってやるぜ。
 お安い御用だ、造作もねェ。どうだ?
 そいつがお望みか、、お前は」
「…駄目よ、あんたじゃあ」



そういうのじゃないのよ、そんなの何一つ気持ちよくないわ。
気が削がれたと言わんばかりに、は身を起こした。


間髪置かずドフラミンゴが口笛を吹き、従者が近寄って来る。
錠の鍵を外す為だ。
初老の老人は難なく錠を開け、すぐに姿を消した。


残されるのはいつだって、
うらびれたと不機嫌なドフラミンゴだけだ。
どこまでいっても交じり合わず、いつまで経っても分かり合えない。
もっと若かった頃の淡い思い出でさえも、今更持ち出すには不十分だ。



「…あんた、あたしの何もかも奪うつもりなの」
「そうかもな」
「愛してるのね」
「…あぁ?」



反射的に同意しないドフラミンゴを横目に背伸びを一つ。
出会ってしまった不運を恨むのはお門違いだ。
まるで惹かれあうように巡り合い、それからは泥沼一直線。
想像よりも早く燃え尽きた。
そうして残される漁火。燻る欲情。



「腐れ縁もここまできたら大したものね」
「メシくらい、奢ってやるぜ」
「報酬は」
「何でも」



お前が欲しいものなら何でもくれてやる。
だから俺に尽くせと嘯くドフラミンゴの隣に立てば、
この世界でさえも手に入れたような気になり、
それこそが二人の間に立ちはだかる深い溝なのだと、
そんな事はとっくに知っていた。




何じゃこの話という感じなのですが
むかーしに関係があった二人

2017/10/07

水珠