一生お前を離す気はないよ











いよお、だなんて軽い口ぶりで侵入してきた男は、
まるで我が物顔で座り込む。
この男は疫病神だ。
こいつが関わり始めてから、人生が倍速で下り坂を転がり始めた。


そもそも、こう簡単に侵入されないようにと、
住処は頻繁に変えているし、無論、居所なんて伝えてもいないのに、
何故かしらこの男は予定調和の如く顔を見せるわけで、
盗聴器の一つでも仕掛けられているのではないかと、
毎度不安になるのだが、今のところ発見されてはいない。
仕掛けられていないのか、相手が上手なのかは今のところ謎だ。


戸締りは完璧にし、シャワーから出たらこの有様なわけで、
最悪だと一人呟いた。



「先に頂いてるぜ」
「ちょっと、勝手に飲まないで」
「おいおい…何て恰好だよ」
「どうやって入ったのよ…」
「開いてたよ」



平然と詰まらない嘘を吐く尾形は、
とっておきのスコッチを惜しげもなく飲み干していく。



「…何の用よ、尾形」
「そう邪険にするなよ。俺とお前の仲だろう?」
「どんな仲だったっけ?」



確かに、非はこちらにある。
確かにそうだ。
それは認めざるを得ない。


商売相手だったとある組織に追われ、
それこそ死ぬ気で逃げ回っていた時に出会った男だ。
出会ったというか、出会う事になったというか、
そう仕組まれていたというのが正しいか。


鼻先に銃口をつきつけられ、流石に年貢の納め時かと腹を括った、
まさにその時だ。この男が現れ、結果的には命を助けられた。


まあ、この男が単に人助けなんてものをするわけはなく
(当然だ。職業柄という意味合いもあるが、何より似合わない)
単にこちらの持ち得る情報が欲しかっただけであり、
生命の危機は大して変わらなかったりもする。
尾形の銃口がこちらに向いただけだ。



「何回も言ってるけど、別にあたしは組織に属してるわけでもないし、
 単なる小間使いよ。何でもやるってだけ。だから何も持たない。
 あんたの欲しいものなんて何一つ持ってないのよ、出て行って」
「…いやいや、おかしいな」
「ちょっと、そのキャビア…」
「俺に講釈を垂れられるような立場か?お前は」
「食べないで」



尾形がこちらを見た。
あの、何ものもうつさないような眼差しだ。
最初に合った眼差しもそれで、
冷たい銃口越しにこちらを見据えた光景は未だ夢に見る。


僅かグラスに残ったスコッチを一気に煽り、そのまま床に落とした。
グラスの砕ける音が木霊し、欠片が足元に飛び散る。



「…」
「あぁ、悪いな。滑った」
「やめて」
「お前をこうしてもいいんだぜ」
「笑えない」
「大人しく俺の言う事を聞けよ」



この男は最初からそのつもりで近づいて来たのだ。
どこにも属さず、多少の気分次第は影響するが、
小間使いのような仕事をし、様々な組織に顔の利くを利用したい。


そんな輩は確かに珍しくなく、
厄介事に巻き込まれたくないが為に
こうして転々と住処を変えて暮らしている。
実際にやり合ってもいいのだが、面倒事は基本的に避けたい。
やる気はないからだ。



「ずっと断ってるはずだけど―――――」
「逃げ道なんかないだろ」
「近づかないで」
「俺とお前、そう悪くないはずだぜ」
「心にもない事、言うのね」



平気な顔して。



「どうした、不安か?顔色が変わったな」
「…あんたの評判は聞いてる。随分なものね、知ってるのよ」
「だったら、どうした」
「あんたが一人なのは、仲間なんていらないからよ」
「どの道、お前に選択肢はない。
 俺を選ぶか、俺に殺されるか。 、お前に選ばせてやるよ」



俺は優しいからなと続けた尾形は、
ガラスの破片を踏みつけながらジリジリとこちらへ近づいて来る。
そもそも、人の家に土足で上がり込むような男だ。
心ひとつ寄越さず、人の心を土足で踏み荒らす事も出来る。


背を向けて走り出す事は余りにリスキーで、
そのまま後退っていれば壁に背が付き、尾形はすぐそこだ。
単に捕食の相手だとして、この男は骨までしゃぶり尽くすだろうか。




金カムで初現パロ
元々現パロが得意でなく、
殆ど書いた事ないんですけど。。。
殺し屋とか、そういう類の人たち、、、?
仕事が何なのかもうよく分からないんですけど
とりあえず現代が舞台です
言ったもの勝ちである


2017/11/09

NEO HIMEISM