いつだって



本気の恋をしてた













血潮で全身を染めながら破損したゴーグルを投げ捨てた。
寄せ集めの外人部隊にしては及第点の戦いぶりだったはずで、
もうあと少しのところに合流地点は迫っているのだが、
そのあと少しが中々埋まらない。


酷くゆっくりと、だが確実にこちらの兵力は削られている。
今しがたも唯一のスナイパーが利き腕に被弾したところだ。



「おい!どうすんだ!」
「そろそろ、そろそろだ」
「あ!?」



吹き荒ぶ砂嵐、飛び交う銃弾。
静けさの欠片もないこの世界。
半壊した建屋に身を隠し、消耗戦を迫られた数日を思い出す。


食料は今朝方尽き、水もほぼない。
大して敵さんの攻撃はまったく勢いを落とさず、
こちらの壁を削る勢いで銃撃を続ける。
本丸だろうが、これでは打つ手がまるでない。


捨て身で飛び出すのも手だが、生憎自殺願望はないわけで、
これまで後方支援をお願いしていた男も使えなくなった今―――――



「えっ!?」
「遅ェよ、 !!」



辺りが激しい風圧に襲われ、思わずしゃがみ込む。
目前に広がるのは、戦闘機からの一斉射撃により藻屑と化す本丸だ。


逃げ出す隙もないスピードに、あの、
地を喰らうかの如く叩き付ける鉄の粒。
悲鳴さえも衝撃音に掻き消される。


掃討は五分程続いた。











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戦闘機を操縦していたのは、この外人部隊を治める だ。
数々の貯金を元に(彼女のチームは酷く優秀だ。故に高い)
通常ならば到底手に入らない強力な武器を手に入れる事が出来る。
地獄の沙汰も金次第とはよく言ったもので、彼女は命を金で買う。
一昔前の型しか買えなかったと愚痴る を見ていた。


杉元が のチームに入るのはこれが初めてだ。
ずっと寄せ集めのチームだとばかり思っていたが、
いざこうして話をしてみると、大半が幾度か組んだ事のある面子らしい。


理由はそれぞれで、単に金になるからという奴もいれば、
を気に入っているからという奴もいた。
命を晒す現場では信頼関係は重要なファクターとなる。



「あんた、大したもんだな」
「不死身の杉元、噂は聞いてるわよ」
「そいつァ、いい噂かい」



グラスを掲げながらそう言い、笑う。
そんなつもりではなかったが、
何となくそういう事だろうと思っていたし、
恐らくそれは だって同じだ。


乾杯した瞬間、目が合った。
の舌が、唇に残った滴を舐めとった。


それからはもう完全にダメで、
仲間と話をしている の一挙一動に目を奪われる。
そんな杉元の目線に彼女も気づいているようで、要所要所で目が合った。
途中、流石にこちらが気恥ずかしくなる程にだ。
戦闘明けで気分が昂っているからだと言い聞かせる。
言い聞かせた。


打ち上げは際限なく続き、一人、二人と姿を消していく。
女を買いに行く連中が多かった。


そんな折、 が席を立ち、杉元のところへ近づいた。
特に言葉はないが、指先が腕を撫でた。
つられるように立ち上がる。



ボスにおいたするんじゃねェぞ、坊主。
誰かがそう呟いた。











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昼間の熱が嘘のように外は冷え込んでいた。
アルコールを摂取している為、
多少の肌寒さ程度に感じてはいるが、
が寒そうに身を震わす。


彼女の足取りは軽やかで、杉元を容易くどこかへ運び去る。
とりあえず歩きながら話をした。


何故ここに来たのか、だとか、これまで何をしていたのか、だとか。
そんな他愛もない話だ。


嘘を吐く必要もないと判断し、自分なりの真実を伝える。
他に行く場所もなく、戦場を彷徨っている事、
以前の隊では上官と揉め、追い出された事も伝えた。
は笑っていた。



「じゃあ、次はあんたの話だ」
「…あたしの?」
「あぁ、そうだ。あんたの話を聞かせてくれよ」
「そうねェ…」



あたしもあんたと同じね、似たようなものよと は言った。
戦場でしか生きる事が出来なくて、
ずっとこうして戦地で命を奪っている。
もうそれがいいのか悪いのか、そんな事さえ分からなくなったのよ。


の手が杉元の手を握った。
そのまま引かれ、人気のない倉庫街へ侵入する。
まるで子供のお遊びの用で、それにしては悪戯心が過ぎる。


鍵の開いている倉庫へ侵入し、当然のように見つめ合った。
これはきっと良くない遊びだ。
何の意味もない。



「断らないのね」
「断る理由がないだろ」
「可哀想に、どこにも行けないのね」
「そんなの、あんただって同じだ」



視線が絡まったあの唇を親指で撫でる。
の舌が指を舐め、そして噛みつく。
これは、おいたではなく、何と呼ぶべきなのか。


彼女の両手首をそれぞれ掴み、その身体ごと壁に押し付ければ、
見た事のないような表情で名を呼ばれ、気づけば口づけていた。




杉元現パロ
当然の外人部隊、傭兵です
アシリパさんフィルターがかかっていたのですが、
何だかんだこの男、アシリパさんいなかったら
割と外道だよな、とか考えてました、、、
外道というか、普通の男だよなと
私は杉元が大好きです


2017/11/18

NEO HIMEISM