自己正当化理論








ボタンが取れているとに指摘された銅寺は、
私とした事が、だとか何だとか呟きながら
左手の袖にぶら下がったボタンを引きちぎった。


これまでボタンが取れかける事など
一度としてなかったのは偶然ではない。
つけてあげようかと言うの申し出を丁重に断り、そ
のまま家へ持ち帰った。


仕事の内容によっては自宅に戻る事が出来ない日が続く。
それは銅寺だけではなく、他の立会人も同じだろう。
だから、自分が間抜けだったのだと思うのだ。


シンと冷えた室内に入り電気をつける。
無論誰もいない室内には細かな埃だけが浮いており、
三ヵ月前に見た光景と何ら変わらない光景が広がっている。
何度見てもここには誰もおらず、その光景だけで事実を認識する。
もうここに彼女はおらず、自分はたったの一人になってしまったのだ。


頭では分かっていたがこう、目の当たりにすると流石に堪える。
この部屋で自分の帰りをずっと待っていた彼女の横顔を思い出す。
彼女はいつだって泣いていたではないか。


この静かな部屋は冷え、涙で満たされている。
まるで息が出来なくなりそうで、
ボタンの取れたシャツを床に捨てたままベットに横たわった。
隣にあったはずの寝息はない。
自身の重み分スプリングが沈み、そのまま沈んでいく感覚に襲われた。











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翌日仕事先でと会い、彼女と別れたんでしょうと言われた。
何の話?そうはぐらかした銅寺の言葉は聞かず、
そういう事もあるよと、どうやら彼女は慰めていたようだ。
だったらもっと近づいてよと思うが、彼女は彼女で他の誰かのもの。
それ以上は求められない。


「OK、大丈夫だよ」
「本当に??」
「あぁ」
「次はあたしがつけてあげるから、ボタン」
「ありがとう」


の背後には憤怒の表情を引っ提げた門倉が立っている。
この二人のように皆が知るカップルになりたくはないが、
同じ環境下で生きる事が出来るだけ幸せなのだろうか。
離れないのか。


答えはまだ出ないが、
とりあえず次にボタンが取れた時は、
門倉の前でにお願いをしてみようと思う。



私の中で友達にしたい立会人No.1である銅寺さんです
「OK」っていう口癖いいよね。。。
主人公は雄大くんの恋人というポジションで
ほら、銅寺は<ヤンキー嫌い>ですから。。。
2015/09/25

水珠