あんたって人はいつも












こちらが聞きたい言葉は一切言わず、
只こちらの身ばかりを貪る理由は知っている。
そういう脳の造りなのだ。


心と身体は決して一致せず、只ここで消化する欲望だけが目に見える。
別にこの男が特別なわけではなく、基本的にどの男もそうだ。


その対象に陥る必要がないだけであって、
だけれど現状を顧みるに、どうやら自分は
それに上手く嵌ってしまったのだと、
それだけの話だと思えればいいのだが。


今宵も身を貪る為だけに顔を出した杉元に、
ほんの少しの嫌味を言えば、
こんな事はしちゃいけないだなんて、
至極真っ当な事を言うもので腹が立った。


なら、あんたは。
ムキになりそう言えば、いつものように微笑み黙る。



「ほら、またそれ」
「…何が?」
「あたしだけが悪いみたいに、そんな」
「あんたには感謝してるさ」
「感謝?」



そんな言葉を頂戴する為に、お前と寝ているわけではないのだと、
恐らくこの男にはそういう機微が一切通じない。
身体を寄越して感謝もクソも、
そんなに残酷な言い方があったのかと驚くくらいだ。


この、出自の分からない男を見つけたのは三月程前の事であり、
酷い雨の日に空腹で行き倒れていたところを拾った。
どこから来たのかも、何ものなのかも、
こちらの質問には一切答えない男は、名だけを告げた。
俺は杉元佐一だ。


顔が可愛らしかった為、一先ず家に置いておこうと容易く考えた
も悪かったのかも知れないが、
当然のように懇ろになってしまい、今に至る。


寝た以上、何かしらの進展があるのかと思いきや、
どう見ても他に心を持っていかれているその様子を受け、
これは散々な思いをするに違いないと覚悟した。


この男の目を見ればすぐに分かる。
ここにいるがここにいない。
こちらを見ているようで見ていない。
それなのに、その眼差しが心を捕らえ仕方がない。


だからこんな人生になっているのだと、
まあ、それも頭では理解っているのだが。
妙な男にばかり振り回されるくだらない人生。
同じような事を幾度となく繰り返している。


つい先日も、幾人目かのくだらない男が、
数年振りに金の無心に来るという、
まったく道理のいかない目にあったのだが、
同席していた杉元が一蹴してくれた。


そういうところが又、良くない。
求めてしまいそうになる。


この男は暴力に対する適切な対応を心得ており、
それをまるで当然のように扱う為、心が揺さぶられるのだ。



「そう、怒るなよ」
「怒るわよ」
「そんなの、時間の無駄だぜ」
「…あんた、帰んなよ」
「…」
「又、だんまり」



どういう理由があるのかは分からない。
杉元は決して口にしないからだ。


だから今、この寝具の上ではっきりしているのは、
心ここにあらずの男から抱かれる、
心を蔑ろにしている女が哀れだという事実だけだ。


それでも思う。
こんな真似はよくない。心が痛んでしまう。
そんなこと言うなよと、その場だけの言葉を紡ぐ杉元は
やはり心の話など一切せず、気持ちさえも伝えない。


まるで道化のようだと感じるが、
だからといって今更後戻りも出来ず、
今日も唯一、愛しているの言葉を飲み込むだけだ。




出奔後の杉元です
死ぬほど性質が悪いんですけど、、、
出奔〜戦争に行く前くらいかな
酷い真似をしています
顔が男前だから仕方がない
そして名前変換が一カ所しかない



2017/12/10

NEO HIMEISM