一方通行の支配欲









僕はさぁ、まぁこんな男だから
いつまでも君と一緒にいるだなんて、
そんな事は言えないわけだよ。
そんな、見るからに嘘の言葉なんて欲しくないだろ、君だって。



どうやらこの単調な人生は怪異に統べられるわけだし、
まったく違う生き方を選んだ君に
それを無理強いする事は出来ない。
これでも君の事を尊重しているんだぜ。だ



けど君は少々馬鹿だから、
僕からのこんな手紙を受け取る羽目になっている。
そういう所は昔からちっとも変っちゃいないな。



、君の為に忠告しとくけど、
一刻も早く治した方がいい。
君のそういう所は。
臥煙さんも心配していたぜ。



こっちの世界から逃げ出した君は
あたかも普通の面で暮らしているみたいだけれど、
案の定というか当然というか、
すっかり怪異に付き纏われてしまって、
結果マトモな人生なんて歩めちゃいないんだろ?
失笑ものだよな。



だから君はこちらから逃げてはいけなかったんだ。
そもそも逃げて解決する問題なんてありゃしないんだから。
能力で考えれば僕らを圧倒的に凌駕する才を持つ癖に。



逃げ回ってばかりで何の対処もしないもんだから、
怪異のアンテナになってしまって、
君は本当に馬鹿だ。




「…何この手紙」




ヒラヒラと空から降って来た手紙に
疑問を抱く段階はとうに過ぎた。
この一年で五度目の怪異との遭遇。
年明けから憑き纏っているこの怪異は箱もののようで、
一度手に落ちると中々抜け出す事が出来ない。
勝負好きの性質の悪いものが相手なのだ。



まるで悪夢のような風景
(あえていうならば、ジョルジョ・デ・キリコの絵画のような)の中、
終わらない道を歩く。
腹は減らないが身体は疲れる為、歩いては眠る。



自分以外の誰もいないこの世界はとても静かだ。
もういっその事、ここで暮らそうかと思える程度には。
だけれどその選択肢を選ぶとなると、
捨てるものが増えすぎる。
仕事とか、生活とか。そういうもの。
しがらみを捨て去るほど達観した生き方に至ってはいないのだ。




「こいつはぞっとしない風景だね」
「どうやらこいつがあたしの心象風景ってヤツみたいよ」
「…、君、どこか病んでるのかい?」
「そんな事言う為に、わざわざ来てくれたの?メメ…」




そんなわけないわよねとは続ける。
そうして、よくも来れたわねと感心した。

この、に憑き纏っている怪異の事は知っていた。
だけれど彼女は別に助けなんて求めないし、
元々メメ自身人助けは範疇外だ。
だからこれは単なる興味、知的探求心。
こんな悪夢のような世界に遭遇する事は滅多にない。



「さっきの失礼な手紙は何のつもりなの?」
「あれは恋文みたいなものだよ」
「へェ」
「ときめかなかったかい?」
「言っとくけど、ここであたしを口説くのは命取りよ」
「!」
「この怪異、あたしの事愛しちゃってるから」
「そいつは、妬けるね」



隣に佇むアロハシャツの男はそう嘯き、
これまで行けども行けども果てのなかった悪夢の先に
どす黒い雲が渦巻き出現した。
どうやらこれから怪異が怪異らしく登場するのだろうと思う。






大学のサークルで知り合った主人公とメメです
メメ第二弾かよと
何か増えそうな予感
キリコは私の大好きな画家です

本来ならこの怪奇ももっと詳しく書くべきなのですが、
それを書いてったら何の話なのか分からなくなりそうなので。。。
とりあえず男前の怪奇と思っといて損はない

2015/10/16

NEO HIMEISM