死してなお縛るのか
やかましい口を片手で抑え、
服も半ば脱ぎかけの状態で事に及ぶ。
その気のない女を力ずくで犯す事は好きだ。
嫌悪に塗れた眼差しがこちらを射貫き、
望まれない行為を受け入れざるを得ない状況。
それに酷く興奮する。
恐らく は興奮も何も、散々だと思っているはずだ。
前回、別れの言葉を投げて来た に渾身のハメ撮りを披露し、
いよいよ口火を切った。
これまでのうのうと楽に生きてきた女だ。
窮地に追い込まれたのも初めてのはずで、
顔面蒼白といった様子の は何が目的なのと、掠れた声で呟いた。
何も。別にお前には何も。
俺だけを愛してくれよ、だなんて、とりあえず形だけ。
これまで好き勝手に生きてきたんだろう、少しくらいいいじゃないか。
なあ、 。お前の幸せを少しくらい俺にもわけてくれよ。
どんな味なのか手触りなのか―――――
幸せってのがどんなもんなのか教えてくれよ。
はっきりとした要求を口にしなかった尾形に対し、
術を選べなかった は、とりあえず従順に徹した。
連絡があれば嫌々ながらも姿を見せる。
そんな気分でもないだろうに、これまで通りの奔放さを貫く。
誰にも知られない為に。
その姿が余りにも滑稽で愉快だ。
明らかに虚栄、そこに真実は一つも存在しない。
まるで人生そのものだな。
店のカウンター上で力任せに犯されている は
虚ろな眼差しで床を眺めている。
時折、反射的に反応する身体を持て余しているようだ。
こうして の身体を貪りながらも頭の中では、
この次に待ち受けるであろう出来事が希望を含め膨れ上がる。
このくだらない人生の集大成。
まさか、こんな巡りあわせが叶うだなんて。
「…明日だっけ?」
「…」
「いよいよ待望の御対面か」
感動の場面だな。
「…!!」
緩々と腰を動かしながら独り言ちる。
語り掛ける口調だが、 の口は塞いだままだ。
別に会話など求めていない。
明日、勇作が帰国する。
のLINEで確認した確かな情報だ。
既にその情報は白石に伝えてあり、あれはあれで動き出した。
全てこの の知らぬ場所で。
そもそもこの一連のギークは既に準備されていたものだ。
恐らく尾形がいなくても、何れこんな目には遭っていたはずだし、
何ならもっと悪いかも知れない。
俺はお前を犯すだけだが、もしかしたらもっと酷い目に、
例えば売られるだとか、もっと複数に輪姦されるだとか。
最低な選択肢は幾らでも存在するだろ。
だからこれはそう最低じゃないって事なのだと、
先程から尾形は呆れる戯言を囁いている。
がつがつと力任せに突きあげる尾形の身体は汗ばみベタつく。
相性は決して悪くなく、
今だってこんな有様なのに気持ちは良いのだ。
尾形の口から勇作の名が吐き出された瞬間の、あの慟哭。
胃の底が押し上げられ、今にも吐きそうだった。
頭の中では大量の情報が一斉に動き出し、
目前の男の目的を弾きださんとしていた。
「…!」
「中に、出さないで…!」
射精する寸前、身を捩り逃げようとする の身体を上から抑え込んだ。
ふざけるなと吐き捨てた の声は力なく、何の思惑もない排泄と化す。
だってお前は絶対に処理するだろう。
俺の子を宿すわけにもいかない、だからって俺に縋るわけでもない。
だったら自分でどうにかするしかないもんな。
口には出さないが尾形のそんな腹も は理解しているはずだ。
だって、こんな男の子供なんて誰も望みやしない。
なあ、 。お前もそう思うだろ。
「最悪」
「ピル飲んでんだろ」
「だからって嫌なもんは嫌なのよ」
あんたに中出しされるのがムカつくだけなのだと、
恥も外聞もなく片足を曲げ、
垂れる精子を拭き取りながら吐き捨てる を眺めていれば、
何故だかおかしくて堪らなくなった。
この女は今、こうして無駄な精に塗れたまま、
明日には許嫁を迎えに行くのだと考えるだけで愉快で堪らない。
例えこれが一過性の自己満足だったとしても、それはそれで結構だ。
長生きするつもりもないし、どうせ苦しむならお前も同じだよな。
そう思える相手は多ければ多いほど良い。
一人じゃないっていいよな。
お前もあいつも、皆、道連れだ。
尾形と勇作です
勇作の許嫁に手を出す尾形
最終回前、余談ではないが
前回の続きで尾形視点です
次回最終、勇作視点
2018/07/25
NEO HIMEISM