千年の恋人よ、この問いを預けて往く
まるで大女優のように大きなサングラスをかけたが
姿を現したのは15分ほど前の事だ。
こんな場所に呼び出すなんてどういうつもりよ、だなんて
憎まれ口を叩く彼女は相変わらずの不運に付き纏われており、
これではもう死んだ方がマシだと吐き捨てた。
このという女は不運で出来ている。
それこそこの世に生を受けた瞬間からそうで、
それまで何の問題もなかったの母親は
急激な血圧の低下により意識不明の重体に陥り、
そんな彼女がようやく意識を取り戻したのは一週間後。
その日、生まれて初めて我が子に出会うはずが、
その間には誘拐されており、初対面はそれから二週間後と相成った。
幸いにも無事に戻って来たを、両親は病的なまでに過保護に育てた。
それでも彼女は事あるごとに狙われ、攫われ、枚挙に暇がない。
何かよくないモノが憑いているのではないかと疑念を持った両親は、
とある場所へ相談に出向いた帰りに事故死した。
幼いは叔父の元へ引き取られ、そこでも大変過保護に育てられた。
美しかったのだ。
子供ながらに、いや、子供と思えない美しさだった。
彼女はその後も、周囲を不幸に巻き込みながらどんどんと美しくなった。
命を奪うごとにその美しさは増し、図らずとも人目に触れるようになる。
の美しさは人目を惹く。
まるで、獲物を引き寄せる様に。
「忍野」
「やあ、」
「何の用」
大きなサングラスで隠された顔からはまるで表情が読み取れない。
「それ、外してくれないか」
「…どうして」
「お前の顔が見たいんだ」
「…」
実は以前、似た真似をした事がある。
あれは彼女が愛した男の命を不可抗力で奪った直後の事だったと記憶している。
愛そうが愛すまいがの周囲にいる人間は死ぬ。
どんな形であってもだ。
故に人を近づけなかった彼女が、唯一心を許した男がいた。
優しい普通の男だった。
余りに素朴で、純粋に彼女を愛したその男は、何一つ抗う事もなく死んだ。
分かっていた結末のはずなのに、酷く動揺したは
もう死んでしまいたいのだと、目も当てられない程に落ち込んでしまい、
メメに声がかかったわけだ。
その時にの目を見た。
あの、美しい目を。
見たもの全てを魅了する美しい眼。
こちらの意思とは関係なく、意思さえも奪われる。
何かがそうさせているのだと頭では分かっているのに、
この身はもうに触れたいばかりで仕方がない。
あんた、普通の男じゃないのね。
は確かにそう言ったし、そう言った唇を手荒く貪った。
あの時の味が、忘れられないだけだ。
だから。
「味をしめたのね」
「…そう言うなよ、俺だって傷つく」
「どうだか」
満月に近づけば近づくほど、その疼きは力を増し、
が欲しくて堪らなくなる。
これは呪いだ。
命を喰らいたい彼女がばら撒く性質の悪い呪い。
不特定多数に向けて放たれるそれはピンキリで、
この程度ならどうにでも出来る。
そう高を括っていた。
木乃伊取りが木乃伊になるとも知らず。
「結界ね」
「あぁ」
「そうまでして?」
「そうだよ、」
そこまでしても俺はお前をもう一度、抱きたかったのだと、
存外俗っぽい思いの丈を吐き出せばが笑う。
願わくばに染みついた不運という名の呪いを始末したいが、
そうしてしまうと、ここまで病的に彼女を欲する心も死に絶えるかも知れない。
はで美しいまま、もう悲しむ事もなく普通に年をとり死んでいくだろう。
そんなものを、俺は、求めていないんだが、
お前はどうかな、。
触れた先から熱が移りそうで酷く興奮する。
逃げないはメメを見上げ、みんな同じ顔をして私を犯すのだと、笑った。
久々のメメです
みんな意外とメメ好きだろ…?
私は大変好きですが
圧倒的に社会性がなくても
エロいのでいいです
2018/11/13
NEO HIMEISM