哀れな恋でした

• 見知らぬ中年の指は冷えていた。
  こんな部屋で毎度同じ事の繰り返しだ。
  
  
  金で若さを買う親父共は鼻息荒くこちらの腕を取り、
  ほんの数秒でさえも時間が惜しいと言わんばかりに、
  性急にベッドへ押し倒してくる。
  
  
  自分の子供と同じか、
  それよりも幼い子供相手に薄汚い性欲を吐き出すわけだ。
  
  
  マッチングアプリで募集をかけ、パパ活目的の女を
  手当たり次第に買う男達は一定数おり、そこに目を付けた。
  やつらは好き勝手にこちらを身体を弄り、この制服に欲情する―――――
  
  
  おいおいおっさん、何やってんのよ。
  だなんて薄ら笑いながら男達が部屋へ侵入して来る。
  
  
  一人、二人、三人。
  こちらを押し倒し身を弄っていたオヤジのニヤけ顔は見る見る内に蒼白となり、
  ここでようやくお役御免となるのだ。
  おっさんは男達に引き剥がされる。
  
  
  尾形。
  最後に入って来た男は尾形で、こちらに近づき手を差し伸べる。
  
  
  
  「お疲れ」
  「遅いよ」
  「何もされちゃいないだろ」
  
  
  
  この男は私の彼氏で、私を美人局に使っている。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
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  元よりは都内の高級住宅街と呼ばれる地域に実家のある、恵まれた子供だった。
  幼稚舎から私立に通い、エスカレーター式に中、高と進学する。
  
  
  一流企業の重役である父親と、裕福な実家出身の母親元で育ったは、
  やはり何不自由なく育ち、約六割の子供が抱く一般的な反抗期を迎えた。
  よくある思春期の反抗期というやつだ。
  
  
  何がきっかけだったかは覚えていない辺り、
  大した不満でもなかったはずなのだが、
  とある夏の日、母親と口論の末、夜の繁華街に繰り出した。
  
  
  着の身着のまま飛び出したもので、制服のままだったと記憶している。
  夜の繁華街は昼間とはまるで別の顔をしており、制服姿のは悪目立ちした。
  
  
  ねえ、君。そんな恰好でここにいたら補導されちゃうよ。
  
  
  見知らぬ親父がそう声をかけてきたのは、それからすぐの事で、
  まさかその時はこんなパパ活だとか、
  それこそ未成年に邪な思いを抱き声をかけてくる大人がいるだなんて
  マンガやドラマの中の出来事だと思っていた為、
  補導の二文字の方が気になり、のこのことついて行ってしまった。
  
  
  男の目的地は奥路地にある違法な連れ込み宿で
  (確かにそうだ、制服姿の未成年を連れ、ホテルになんてしけこめやしない)
  
  
  途中で異変に気付いたが逃げ出そうとしても無論、男は手を離さない。
  恐怖で声も出なかった。
  
  
  
  『いやいやおっさん、超、無理っしょ』
  『ないわー』
  『俺、写真撮っちゃったもん、やばいっしょ』
  
  
  
  細い路地にわらわらと男達が入り込み、オヤジを取り囲む。
  きつく握られていた右手はいつの間にか解放され、赤い痣が色濃く残っていた。
  
  
  オヤジが男達に連れ去られた後、しゃがみ込んだに近づく男がいた。
  あんたさ、こんなとこで何やってんの。そんな恰好で。
  無防備なんじゃないの、ちょっと。
  男は尾形と名乗り、ここらで遊びたいんならルールを教えてやるよと笑った。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
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  その制服を一目見ての出自を察した尾形は一つの遊びを考えた。
  すぐにだ。
  
  
  ちょっと優しい言葉をかけたら、
  はペラペラと悩みとやらを口にした。
  心に入り込むのは容易かった。
  
  
  お嬢様学校に通っているは格好のエサとなり、
  美人局はかなりの確率で成功した。
  
  
  恋という体で尾形に逃避をした彼女は全ての理由を人任せにする。
  ひたすら尾形に愛されたいだけなのに、
  
  
  
  彼は愛している口先だけで囁き美人局を続けるのだ。
  私が他の男に触られても平気なのと、
  もうこんなことはしたくないと泣くを宥めすかし続ける。
  の精神が拮抗を崩すのも時間の問題だった。
  
  
  
  「えっ、あいつお前の女だったの？」
  「…」
  「えぇー？マジでぇ？」
  
  
  
  だってあの女、相当有名なヤリマンだぜと続け、
  しまったという顔をする。
  
  
  杉元は悪い悪い、だなんて
  まるで心のこもっていない謝罪を口にしながら尾形の前に座った。
  
  
  ここ最近、頻繁に顔を出しているとあるクラブに可愛い女がいて、
  その女と簡単にヤれたという話をしていたところ、
  尾形以外の周りがざわつきだし、前述の謝罪に繋がった。
  
  
  どうやらその女は尾形の彼女らしく、
  挙句、その彼女は至る場所で不特定多数の男と寝ているらしい。
  
  
  どの角度から聞いても正気じゃない内容なのだが、
  尾形本人もその事を知っている。
  知られていないと思っているのはだけだ。
  
  
  
  「別にいーよ、そんなんじゃねーし」
  「だっ、だよな！？あれ本気じゃないよな？！」
  
  
  
  フツー自分の女に美人局やらせねーよな、
  だなんてでかい声で叫ぶ杉元を見つめ、ああ、だなんて同意の振りをする。
  
  
  正直なところ、そういった考えは分からない。
  愛しているからだなんて、それが何かの理由になるとも思えないし、
  他の男に抱かれていてもの事は嫌いでない。
  他の男に抱かれていなかったとしても同じだ。
  
  
  何故皆がそこに執着するのかも分からないし、
  自分の女を美人局に使う事がよくないという考え方も理解が出来ない。
  
  
  目的を達成する為に最も手っ取り早い手段を選んだだけだ。
  は若く美しく、価値がある。
  俺にとっても、それ以外の奴らにとっても。
  
  
  只、それだけの事なのだ。
  
  
  
  「おいおいおっさぁーん」
  「これヤバイっしょ」
  「お金のお話しましょーよ」
  
  
  
  もう幾度目か分からない美人局の現場にはいる。
  今回は立ち入りが遅く、オヤジに半ば犯されたような状態だった。
  
  
  もうこんな事は、こんな状態は限界なのだと頭では分かっているはずなのに、
  どうして同じ事を繰り返す。
  
  
  もっとあたしを大事にしてよと泣くの横、しているさと囁く尾形がいた。
  
  
  
  
  
  
  
  

  実録犯罪史シリーズ(尾形)です

  これも何だか久方ぶりに書いた気がする

  時系列的に、高2～3くらいの尾形です

  そしてこのシリーズの杉元は

  クッソリア充でヤバイ奴なので

  書いてて楽しかったです
  
  

  
  2018/12/17
  
  NEO HIMEISM