大事にする方法を知らなかった

駅のホームに座り次の電車を待つ。
毎日が相変わらず詰まらないの繰り返しで、まあでもここ最近は昔よりマシか。

矢沢とやりあって暫くだ。
あれの影響だとは微塵も思わないし思いたくもないのだが、
確かに少し前まで抱いていた鬱屈というか、鬱憤というか。
自身で消化できないよく分からない嫌な気持ちは姿を消した。
だから日々は単につまらないの繰り返しで、別に構わないかと思っているところだ。

それにしたってつい先刻、北千住で人身事故が起きたらしい。
これで小一時間は足止めだ。
ここで待つのもいいが、一旦ホームを出るかと、立ち上がりかけた瞬間だ。

反対のホームにがいた。
あれはきっと、いや、恐らく。
もう一年以上会っていないが間違いない。

あの頃とまるで雰囲気も違えているがそうだ。
はこちらに気づいていない。
彼女も電車の遅延を喰らったクチだ。

一年前より髪が伸びた。
今日はきっとオフの日だ。
アパレルで働いている彼女の休みは不定で、
あの頃の自分はいつも文句を言っていた。
これまで一切思い出さなかったというのに、今になって急に蘇る。

お世辞にも決していい付き合いとはいえなかった。
二つばかし年上のは元々、松岡の先輩の女で、
その世代の女の中でも一際大人びた、あか抜けた女だった。

好きとか嫌いとか、そんなものは知らなかったのだけれど、とりあえず欲しかった。
目についたからだと思う。
その先輩をフクロにした後、力づくで自分のものにした。
あの時はどんな顔をしていたか。
まるで覚えていない。

周囲を完全に固めた松岡のやり口に抗う術もなく、はそれを受け入れた。

「あれ？エーちゃん、あれ」
「うるせー」
「…」

だけれどもうまるで思い出なんてなくて、
辛うじて残っているのは彼女の泣き顔だとか、そんな顔だけで、
思い出さなかった理由だけが明白となる。

後々聞いた話によると、
自分と付き合った事によって前の男繋がりの友人とは切れ、
松岡の取り巻きの女達からも疎まれ、常に心の拠り所がない状態だったらしい。

そんな最中、別れた理由も松岡の勝手で、
要するに最初から最後まで、あの女は振り回され傷ついただけだったといえる。

それにしたってやはり俺という男は未だに自分勝手で、
こちらが裏切ったはずなのにその全てを思い出したくなく、
彼女の記憶を封印していたというのに、いざ目にしたらこうだ。

胸の奥がざわめいて、あんな真似をしたのに声を聞きたくて仕方がない。
だけれど今、只、電車を待っているだけの横顔が強張る様を見たくなく、
こうして眺めている。情けない話だ。
そうこうしていれば、視線に気づいたであろうがこちらを見る。

「一回、出んぞ」
「あ、はい」
「遅延とかついてねーな」

今更どの面を下げて声何てかければいい。
胸の奥が静かに痛むが、そんなものはじきに失せる。
今だったら又、違ったんだろうなと思うも意味はない。
彼女の視界に収まる前に立ち上がり背を向けた。

華音さん、大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
カメレオン夢、私も見た事なくてとうとう書いた次第です！
というか、カメレオンをご存知な方も極めて少なく、
この出会いにマジで感謝みたいな気持ちです　笑
ええー！俺フィーもご存知なんですか！？！？
ていうか、森田系もヒロシ系も網羅！？！？
この偶然、嬉しすぎる…！
とりあえず今回は松岡(ヤザワ後、純菜前)

にしてみました。しかも終わった恋。。。
後悔する松岡が見たくて、、、
リクエストありがとうございました！

2019/1/25

NEO HIMEISM