いい加減、嫌気











朝からずっと降り続ける雨が心まで冷やすようだ。
テーブルの上に乗った携帯は微動だにせず、
気分転換につけたTVからは
詰まらないバラエティが垂れ流されている。



三日前、と壊滅的な喧嘩をした。
きっかけはとても詰まらない事で、
今冷静に考えれば下種の勘繰りをしてしまった
己の失態だと思うのだが、
そんなみっともない事を言えるわけもない。
いいから俺の言う通りにしてろと言った門倉に対し、
ありえないと憤ったは言い返し、
あれよあれよとでかい騒動に発展した。
南方がもうやめろと口を挟みに来たくらいだ。



こちらに背を向けたは泣いていたのだろうか。
もう顔も見たくないと言い、
その場を後にした為よく知らないでいる。
ぼんやりと思い返せば、
南方が必死に慰めていたような気がする。
やはり泣いていたのだろうか。



「やまねェな…」



久しぶりの休みだというのに何にも気乗りせず、
ソファーに寝ころんだ。



「なぁ、門倉に電話したのかよ」
「してませんけど」
「電話しろって〜〜〜〜」
「何であたしが?電話してどうするの?」
「うっわムカつく!今の言い方とか超ムカつく」
「!!」
「お前らが喧嘩してたらマジで迷惑なんだよ〜〜なぁ?」
「はい」



門倉の部下である黒服達さえ頷く始末だ。



「今日だってメシ食いに行きてェのに
 お前が電話してなかったら、俺も気ィ使って電話出来ねェし」
「電話したらいいんじゃないの」
「面倒くさいから嫌なんだよ!けど、腹は減る!」



南方の言い分が嘘だという事は知っている。
彼は単に心配をし、早く仲直りをして欲しいのだ。
あの時も見るに見かねて口を挟みに来た。
南方の出現により言い合いは収束を向かえ、
それ以上の崩壊を防ぐ事は出来た。
そもそも、何故こんな事になったのかだ。



「あんたと一緒にいるのは文句ない癖にね」
「だーから」
「そういうの本当にムカつく。あたしの事信じてないだけでしょ」



どこから湧いてきたのか分からない変な噂を鵜呑みにされたのだ。
どこぞで誰かと一緒にいた、だとか、そういう話。
言い合いの中、彼は言った。
俺の言う通りにしてろ。



「お前がどうとかじゃねェって」
「そもそも、誰発信の噂よ」
「いや、そんなの俺も知らないけど」
「あたしよりも信頼出来る相手の話だったんでしょうね」
「…あーぁ」
「その顔ヤメテ」



何故今回、ここまで拗れてしまったのか。
その理由を知り、酷く納得した。
これは相当根の深い問題だ。



プイと顔を背けたはそのまま喋らなくなり、
今日の昼飯も味気ないのかとうんざりした。




















門倉雄大という男は、良い男だ。
それは、にとっても、以外にとっても。
彼に憧れている人間は多い。
男も、女も。そう。女も。



今回のこの騒動だってそうだ。
発信源は謎のまま、謂れのない疑いをかけられた。
ねえ、雄大くん。これって仲を拗らせようとしてる
第三者がいるんじゃないのかな。
口にしたいがしない。
そんな、そんな情けない真似は決してしない。
別に縋らない。
誰かがいないと生きていけないなんて、そんな女にはならない。



どうして彼は、あらぬ疑いを、
それこそ疑いもせずにかけてきたのだろう。



相変わらずの前後編
最近割と南方ちょい出し多いよね

2015/10/27

NEO HIMEISM