僕は泣き方が下手で、だから泣きたくなかった

• 土方さんは知ってるんですかィ、沖田は前触れもなくそう言う。
  いつもと何ら変わらない表情をぶら下げてだ。
  少なくとも本当の事を言うつもりがないは、
  何の話をしているの、だなんてまるで子をあやすような口調でその場を濁した。
  
  
  何を気取ってるんですかィ、そんなぁ様で。
  沖田の言う事にも一理ある。
  
  
  一斉に襲い掛かる天人を一蹴し、
  その序で、制圧に来た見廻組を返り討ちにした。
  そこに何故、沖田がいるのかは分からない。
  
  
  次々に見廻組を切り捨てていく間、何も考えないようにしていたが、
  いやぁ、こいつァ珍しい顔だ、だなんて言いながら
  返す刀で斬りかかって来るような男だ。
  
  
  
  「あんたァ、何も言わずに消えちまうもんで」
  「…」
  「何かよほどの事情があったんでしょうねィ」
  
  
  
  相変らず無駄に察しのいい男だ。
  
  
  
  「だけどいけねェ、こいつァ始末が悪ィ」
  「…」
  「下手に希望を残すなんざ」
  
  
  
  自分でも間抜けな真似をしたのだと分かっている。
  骸に希望を抱いたのかも知れない。
  
  
  問題は、そんなに事が簡単ではなかったという点だ。
  どこにいても無駄な真似をしてしまう。
  これは生まれ持った悪癖なのだろう。
  男好きのする、そういう女なのだと陰口を叩かれている事も知っている。
  
  
  朧は諦めの悪い男だ。
  あれは酷く執着する。
  
  
  しかし、尚、よくないのは虚だ。
  あの男は根源で、何もかもを見透かした上で嘯く。
  お前には自由をくれてやろう、。
  だけれど、私が必要とする時には必ず戻れ。
  
  
  そんなものは自由でも何でもなく、
  どこまで飼い殺せば気が済むのかと、心底ゾッとした。
  
  
  元は別の星でひっそりと生きていた。
  戦闘的な性質の為、
  成人を迎える前に殆どの子供は星を発ち二度と戻らない。
  元より繁殖に向いていない種族だった。
  
  
  も一人旅立ち、様々な星を転々と放浪した。
  そんな中、どこぞの星で遭遇した虚と一戦交え、生まれて初めて膝を突いた。
  四方手を尽くそうとも勝機が一切見えず狼狽える。
  
  
  そんなに虚は手を差し伸べた。
  意味の分からない、気味の悪い真似だ。
  お前は一人なのだろう、だったら我々と共に行こう。
  生きるか死ぬかの瀬戸際だ、選択肢はなかった。
  
  
  虚はを気に入ったのか側に置いた。
  曰く、前述の陰口だ。
  随分と男好きのする女を捕まえてきたな。
  皆、殺した。
  虚は特に何も言わなかった。
  
  
  陰口の通りとまでは言わないが、幾度か寝た。
  別に、特別な事ではないと思うのだが。
  だけれど元々、放浪する民だ。
  すぐに飽きた。
  
  
  一ヵ所に定住する事が遺伝子レベルで向いていない。
  自身を側に置く虚にうんざりしていたという事もある。
  何も言わず出て行こうとしたを許さなかったのは朧で、
  どこまでも追い詰めお前を殺すと、
  随分と物騒な別れの言葉を頂戴したのだし、
  当たり前のようにそこにいた虚は前述の言葉を告げたわけで、
  何を言っていやがると、その時は一蹴したのだ。
  
  
  意味を理解出来ずに。そのまま次はこの地球に降り立ち、
  今度はもう少し普通の暮らしをしてみるかと幾度かリサーチを繰り返した。
  かぶき町という雑多に人の入り乱れる町に入り込み、
  キャッチに幾度も捕まりながらどうにか住み着く事に成功した。
  
  
  キャッチに捕まり連れて行かれたキャバクラで体験入店を試み、
  幾度目かの店に決めた。条件が良かった。
  そこで、土方に出会った。
  
  
  
  「店を代わったって言ってよ」
  「随分とハードな店ですねィ、こいつァ」
  「あの人、元気にしてるの」
  「さァて…」
  
  
  
  自分で確かめちゃどうですかィ。
  土方は不愛想な男で、上司に連れられて来る事が多かった。
  
  
  これだって理由はきっとなくて、
  それが所謂、恋というやつなのだと店の女の子に言われ驚く。
  そういう真似が出来るのだと単純に嬉しかった。
  土方もそう満更でなく、幾度かの店外の後、褥を共にした。
  
  
  
  「お前に飽きちまったんだって言ってやってくだせェよ」
  「…」
  「お前何て遊びだったんだって」
  
  
  
  翌朝、すぐに朧が襲撃し、そのまま町を離れた。
  張っていたのだろうか、そう思ったが確かめる術がない。
  重ね重ね不義を繰り返す貴様を許すわけにはいかない。
  朧はそう言っていた。
  
  
  不義も何も、何もないだろうと返せば憤る。
  まるで意に介さないに痺れを切らしたのか、
  少し落ち着けと刃先を向けたまま呟く。
  あの男を始末するのは造作もない。
  
  
  ああ、と小さい声が出た。
  ああ、そういう事か。
  
  
  
  「まだ愛してるとでも言いたげだ」
  「…」
  「酷ェ、女」
  
  
  
  だからといって心を切り売り出来ない。
  早く言ってよ、そういう事は。
  そう言い朧と共に虚の元へ帰った。
  
  
  全てを知っているはずの虚は何も言わず、
  いつもの笑顔でを出迎えた。
  二度と自由は与えられないだろうと思えた。
  
  
  土方に矛先が向かないように心は殺した。
  虚に抱かれるこの身体はまるで土塊のようで、
  何の感慨もわかない。
  生きているのかどうかさえ、危うい。
  
  
  こんな事をしているって、あの人には言わないで。
  そう吐き出したは泣いているのだろう、声が震えていた。
  
  
  俺には関係ないもんで。あんたが泣こうが、あいつがどうなろうが別に。
  只、胸糞が悪いだけなんでさァ。
  
  
  沖田の言葉は確信をついている。
  このまま進めば何れ土方と対峙するだろう。
  その時に自身は何を口走るのだろうかと、そんな事を考えていた。
  
  
  
  
  
  
  
  
  

  最近銀魂のアクセスが増えたので

  更新してみました

  こんなですが

  土方→←主←虚、話に出て来るのは沖田、

  というよく分からない話です

  沖田を書く場合、こういう

  よくわからない事になる事多いね。。。

  
  

  
  2019/3/11
  
  NEO HIMEISM