この血の一滴がいつか届くように
「あ」
「!」
しまった、という顔をした玄弥を見るに、
思わず声が出てしまったというところなのだろう。
の視線を感じすぐに顔を逸らした。
まあ、こちらにしても多少気になっていたわけで、
顔を逸らし足早に立ち去ろうとする玄弥を捕まえる。
実弥よりも身の丈がある。
それでもまだ子供だ。
が顔を覗き込めば顔を赤くする。
うぶなのかと思いきや、
あたしの事知ってる?そう聞けば、
兄貴と一緒に厠に消えていく女、
だなんてまるでそのままの事実を告げやがる。
まあ、おおむねその通りの関係なんですけどね。
意味わかって言ってるのかこのガキ。
「あんた、実弥の弟なんでしょ」
「そうだけど…」
「似てるよね」
「!」
そうかな、と玄弥は嬉しそうに笑った。
この素直さが子供たる所以だ。
こちらも身を交わす事は度々とはいえ、
互いに自分たちの話をするような関係ではない。
この玄弥が現れ、やけに機嫌が悪くなった事くらいしか分からない。
が聞けどもうるせぇとしか言わないし、
そもそも話にならないのだ。
だから今回、あえて自ら近づいた。
事あるごとに実弥に近づき
手酷い拒否を受けている哀れな弟が気になっていたからだ。
「仲悪いの?」
「いや…」
「良くないよね?」
「いや」
見た目とは裏腹に中々歯切れの悪い口ぶりだ。
「だって、いつも見てるもんね」
「えっ」
「あんた、いつも視線で追ってる」
気づいてると思うわよ、実弥も。
そう言えば酷く取り乱す。
大方の予想通り、大した会話は出来なかったが、
玄弥の人となりはある程度把握出来たはずだ。
あたしが実弥に話しといてあげようか。
そう聞くも、自分たちの話なんで。
玄弥はそれを丁重に断った。
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実弥とのそれは特に約束があるわけでもない。
大体あちらが声をかけてきて、
よければついて行くし、よくなければ返事をしない。
大体そんな感じの色気のないやり取りで続いている。
まあ、いつ死ぬか知れない身分だ。
その位の刹那さが横行していても不思議でない。
簡単に言えば身体だけの関係で、決して歓迎されるようなものではない。
恐らく足りないものを慰め合っているのだろうと、
こちらは思っているのだが実弥はどう考えているのだろうか。
「ねえ、実弥」
「何だよ」
「あれ」
「あ?」
「あのおっきい子」
実弥の眉間に一際深い皺が刻まれる。
「あんたあれ、弟なんでしょ」
「知らねー」
実弥が玄弥に冷たくあたる理由は分かっている。
恐らく皆、一度は抱く感情だ。
こちらは天涯孤独の身だ。
だからこうして刹那的に生きているのだが、
確かに己の血縁者が鬼殺隊に入ると言い出せば反対する気がする。
あえてその命を散らす必要はないと、
お前を守る為にこちとら身を削っているというのに、
本末転倒ではないか―――――
「実弥、優しいのね」
「うるせぇよ」
「あたしにはまるで優しくないってのに」
「殺すぞ」
だったらその優しさを少しはこちらに向けろよと思うが言えない。
そこまで厚かましくは慣れない。
先を歩く実弥の隣に追いつき、互いの指先が僅かに触れた。
だからって、それを握る事は出来なかった。
不死川兄弟です
『厠に消えていく女』
という言葉を使いたかっただけです
とんでもねえ
ついったで玄弥の名前をずっと
幻弥と間違っていました
すまない。。。
2019/4/8
NEO HIMEISM