きっとそれだけで満足







酒に酔った巳虎は甘言を囁く。
翌日には覚えちゃいない為、彼のそれが本意かどうかは定かでない。
体調の有無によるが、基本的に悪酔いをしない彼は
夜ごと上機嫌で甘言を囁き続けるのだ。



こんな関係もすぐに飽きるのだろうと知って始めたというのに、
不思議と長く続いている。
よくないもの程ダラダラと長く続くものなのだ。笑えない。



今日もこうして巳虎の部屋へ来てしまっているのだ。
そうして当然のベットの上、
の耳側で巳虎はアルコール臭い甘言を囁いている。
もう既に一度射精した後だ。
一昨日から雄大は立会に出ており、一週間は戻らない。
彼がいない間、こうしてふしだらな夜が過ぎていくのだ。
我ながらどうしようもない人間だという事は知っている。



「…酔ってる」
「酔ってねーよ」
「酔ってるじゃない」



酔っていると指摘すれば不機嫌そうにこちらを見つめ、
大きな掌が身体を弄る。
まるで本当の恋人同士のように。
素面のこの男にそんなつもりは更々ないのだと知っていても錯覚する。
そんな気もないのに心がざわつきそうになるのだ。
まったくもう、二人して何の意味もない事をしている。
誰にも知られてはならない下らない戯言だ。



「明日も来るんだろ」
「…多分」
「だってあいつ、まだ帰って来ねーだろ」
「多分ね」
「妬いちゃうなぁー俺」
「嘘吐き」



酒に酔わされたこの男の言葉は何一つ信頼に値しない。
そもそも、信頼に値するものなど何一つない間柄だ。
うっかり忘れてしまいそうになるが。



バカみたいに広いこの部屋には
アルコールの匂いと嘘ばかりが漂っている。
とても心地よい。
こんな自分など、死んでしまえばいい。
信頼に値しない。



「でも、まぁいいか」
「?」
「俺はお前の事、束縛なんてしねーよ」
「何?」
「あいしてるからぁ」



そう言い、何がおかしいのか一人で笑う巳虎を横目に、
この街を見下ろせる窓を見つめた。
曇り一つもない一枚ガラスに映る自身の姿は普段と変わらず、
星空と同化する。



どこかで雄大もこの星空を見ているのだろうか。
そんな事を考える自身に自己嫌悪さえ抱くが、
それさえも見透かしたのだろうか。
巳虎の腕が腰に巻きつき、そのまま引きずり込まれた。




名前変換なくて焦った
無理矢理一か所作りました

因みに巳虎は愛してるとか言ってても
そんな気はマジでないぜ

2015/11/04

NEO HIMEISM