病のように何度も思う

• 相変らずの様子だな、と笑いながらフィンクスはやって来た。
  何の連絡もなしに、前触れもなくだ。
  
  
  相変わらずも何も、前回会った時より
  体重は優に五キロ以上落ちているし、
  この一週間、ロクなものは食べていないし
  (というよりも、固形物が喰えないのだ)酒を飲めば吐く。
  その繰り返しで体重は劇的に落ちた。
  
  
  はずなのだが、ふらりとやって来たフィンクスは
  そんなこちらの様子になど、一切興味がないらしく、
  勝手にズカズカと部屋へ上がり込み、
  これ又、勝手に冷蔵庫を開けている。
  
  
  ちょっと待ってよ、フィンクス。
  来るなら来るって事前に言ってくれたら、
  もっとめかし込んで出迎えたってのに。
  何もこんな、殺しの最中に来なくったっていいじゃない。
  
  
  瀕死の男は床を血潮で汚しながら必死に逃げようともがいていて、
  関節を壊し動きを封じたに向かい口汚く叫んでいる。
  
  
  別に殺したいわけでもないんだけれど、
  まあ生きて行くにはお金が必要だし、
  流星街からもこちらは追い出された身だ。
  
  
  自分という女は産まれ自体が罪であり、
  存在が害になるのだと老人たちから迫害された。
  
  
  こんな場所で何を言ってやがると思いもしたが、
  わざわざ言い争う必要もなかったわけで、
  あっそうと返しその日のうちに出て行った。
  
  
  だからあの街に皆ほどの思い入れはない。
  あの街さえも私を受け入れはしなかったではないか。
  
  
  それを思えばもうこの世の何もかもがどうでもよくなり、
  こうして糧を得るために人を殺していたのだが、
  だからって今じゃない。
  こんなのさっさと片づけるから、ちょっと待ってて。
  
  
  
  「お、プリン」
  「あ」
  「頂き」
  「奥にもっといいヤツが」
  「あ、俺そういうの無理」
  「！」
  「こういう普通のやつが一番好き」
  
  
  
  だなんて可愛い事を言うフィンクスに視線は奪われ、
  もう男の姿も見ずに止めを刺した。
  
  
  このフィンクスとは流星街からの知り合いで、
  誰に対してもへつらう事無く
  対等に接する彼の事が昔から好きだった。
  
  
  自らの業を知りうるは欲望を辞する事が出来ず
  至る場所でトラブルを起こしていたのだが、
  彼はそんなを笑いながら庇ってくれていた。
  (と、は思っているのだが、
  当のフィンクスにしてみれば、
  面白いからいいんじゃね？くらいの感覚だった)
  
  
  あの頃からフィンクスがプリンをよく食べていた事を知っていて、
  何となくプリンを見るとフィンクスの事を思い出して買ってしまう。
  
  
  約束の出来る相手ではないし、
  こちらから呼び出すような真似も出来ない。
  だから万が一の事態を想定し、
  こうして色んな種類のプリンを買いだめている。
  フィンクスが好きな事を知っていて買いだめしている。
  
  
  その事をフィンクス自身、知っているのだろうか。
  こちらの気持ちに気づいているのだろうか。
  いや、まさか。
  
  
  胸の高鳴りを抑えながら、
  ソファーで寛ぐフィンクスに近づくも、
  少し眠るわ、の発言にそれ以上の展開は見込めない。
  私の気持ちを知っていて、こういう真似をしているのだろうか。
  
  
  そう思うも、希望的観測は見込めない。
  ぐう、と寝息をたてるフィンクスは案の定、朝まで起きる事はなかった。
  
  
  
  
  
  
  
  
  

  そう、そして今私がやたら気になってるのは

  フィンクスです、フィンクス

  ええ？何かもうめっちゃよくない…？

  あの、絶対に好きになってくれない感じ

  色恋とかめんどくせーとか言いそうな感じ！？

  こっちに興味全然ない感じ！？すき！！！

  因みにこの主人公の事をフィンクスは

  プリンを喰える場所、として認識しています

  ひでえ
  

  2019/05/31