かつて僕らはひとつだった

その女は所謂、上流階級の人間だった。
平安、戦国、江戸と長い間、様々な時代を移ろい、そうして今だ。
人の世はいつだって変わらず、弱者が強者に喰われる日々だ。
その理は変わらない。
人が人であるだけ救いようはないのだ。

富みを貪る美しき人々は、自覚もなしに罪を犯す。
奴らの美しさは確かに尊い。
だが、余りにも儚い。
期限付きの美しさは確かに尊いが、どうせ100年足らずの上限だ。

その女と遭遇したのは、夜会が行われる鹿鳴館だった。
夫人を連れ訪れたその夜会で、
やたらと気位の高いとある上流婦人に遭遇した。

遠目で確認した段階で、まず息を飲んだ。
一瞬、時間が止まったような錯覚に襲われ、辺りの音が消え失せる。
まるでそこに、自分とその女しかいないような、そんな状態だ。

私は、この女を知っている。
あの、他人を見下す冷たい眼差し、
それでいて決して失われる事のない美しさ。

有名な貴族の妻である立場も同じだ。
あの女もこちらより社会的地位が高く、
こちらの存在など歯牙にもかけなかった。

これは確か、平安時代の記憶だ。
最早、時が経ちすぎて、余り詳細に覚えてはいないのだが、
じりじりとひりついた恋慕、焼き付くような情念は身に沁みついている。

この夜会のホストである貴族に挨拶へ向かい、
その隣に立つ女に一瞥を向けるが、
女は当然こちらに視線すら寄越さず、挨拶の一つも口にしなかった。

これは生まれ変わりというものなのかも知れない。
そんなものは一切、信じていないのだがふとそう思った。
そう思う程、その女は瓜二つだった。
見た目も、中身も、その全てが。

その日以来、女の動向を追った。
女は大層有名な士族の娘で、古い家柄の貴族に嫁いだらしい。
気ままな暮らしの中、女は上流階級の婦人たちを集め、
婦人だけのサロンを開いている事を知った。

会員制のそれは上流階級の一員として認められる
登竜門のような扱いになっているらしい。
人間らしい下らない下劣な選民思想だ。

女―――――名はという。
その名も、どういう偶然か同じだ。

はそのサロンの代表で、参加の合否も彼女が決めている。
そんな彼女が女と同衾している場面を目にし、
こいつは、と一案を興じた。

このサロンは、単なるお遊びとは一線を引いた側面を持つらしい。
上流階級の女が使用人の若い娘を愛で苛む秘密の倶楽部だ。

こいつは随分と業の深い女だと思うが、
あの女も似たような真似をしていたではないか。
貧しい平民の子供を殺し、その血を浴び若さを保っていたような女だ。

あの時代はそれらの愚行が横行していた。
鬼と大差ない。人と鬼との差は、内情として余りないのだ。

出会って半月後の満月の夜、無惨はそのサロンに女の姿で紛れ込んだ。
山の麓に聳え立つ屋敷へ入れば、
ほぼ裸の娘が俯きがちにこちらを招き入れた。

白い肌には無数の赤い線が走っており、
この屋敷が随分と退廃した欲望に塗れている事を無惨に知らせる。

娘は奥の部屋へ無惨を誘い、ドアを開けた。
そこにはいた。

西洋の女が着るような薄い絹のローブを素肌に纏ったは、
こちらを一目見、すぐに気に入ったようだ。
娘を部屋から追い出し、は無惨を側に呼ぶ。

このサロンはゲストをもてなすという趣旨の場所だ。
産まれの貧しい、それでいて
美しく若い娘ばかりが集められ、この屋敷に遣える。
先程の娘のように苛まれる為だけにここで暮らすのだ。
だけれど、元の暮らしに戻るくらいならばと娘たちは耐える。

対してサロンのメンバーは産まれも裕福な恵まれた女たちだ。
の目に留まった見目麗しい淑女が選ばれ、この屋敷へ誘われる。
今回の無惨もその流れで屋敷へ潜入した。

「お前はここがどういう場所か理解しているの？」
「…はい」
「だったら、何をすべきか分かるわね」

こちらへ向かい恥じらいもなく足を広げる
の前に跪き、爪先に口付ける。
要はこうして散々と奉仕をしろという話なのだ。
相も変わらず、何と傲慢な女だ。

甘く香る肌を撫でながら話をする。
曰く、主人に愛はない、あれは酷く厭らしい男だ。
あれは衆道の気を隠しているが私には知れている。

世間体の為、そうして子を為す為に嫁を娶ったが、
根っからの衆道なもので、女を抱く事すら叶わない。
私もそう。男など、あんな下賤な、薄汚れた生き物は嫌い。
お前のような柔らかな美しい女がいい―――――

恍惚と頬を染めたの腕を絡め、紐で動きを奪う。
はどうにもプレイの一環だろうと考えているようで、
危機感一つ覚えちゃいない。
それが、その様が酷く滑稽で、笑えた。

「……変わらないな、その傲慢さは」
「え？」

寝具の四隅に腕を縛られたは、
ようやく己の置かれた立場に気づいたらしい。
そんなに覆い被さり乳房に口付ける。

お前は昔から傲慢な女だった。
無惨の声は何故だか二重に聞こえていて、
まるで耳鳴りが生じているのかと思い違えをする位だ。

自身に覆い被さる無惨の姿は美しい。
これはこれで構わない、素敵な夜になるだろうと
微笑んだが小さく呻いた。

肉を割り侵入してくるそれ、その感触。
無惨の顔、そこから首、鎖骨、乳房。
くびれた腰にその下―――――

女の体をした無惨に男性器がはえている。
それは今、まさにの肉を割り、体内に侵入しようとしていた。

が悲鳴を漏らす。
それが大きくなる前に左手で塞いだ。
そうして己が唇の前に人差し指をたて一言。囁く。

「困るのは、お前だよ、」

お前を軸に回転しているこのサロンだ、
男を連れ込み同衾したとなるとどうなる。
お前は男子禁制なのだと声高に宣言していたじゃないか。

ゆっくりと動き長さ耳側でそう囁き、
ついと身を起こした時には無惨の身体がすっかり男のそれとなっており、
塞いだの口からは例えようのない呻きが漏れ出していた。
鳴き声のような、喘ぎ声のような声だ。

あれほど男を憎み、他のメンバーにも
夫を裏切るよう強要していただが、
実情、どちらでも構わないのだと知っていた。

別にこの女は、男だとか、女だとか、そんな事はどうでもよく、
求めているのは自在に操れる玩具なのだと、無惨には知れている。

が湯水の如く金を使い仕上げた豪華絢爛な室内を見回す。
この爛れた世界は今も昔も何ら変わらず、
金に困窮した家から娘を買い弄ぶ。
下世話な真似だ、下品で、不条理で、。
いかにもお前らしい―――――

あの時、血の海の中でこちらを見下ろし、
お前が鬼であろうとどうでもいいのだと嘯いた女を今、犯している。

お前が鬼であろうと、私が鬼であろうとそんな事は些細な事情だ。
私はお前に興味がない。

あの時こちらを見下ろしたあの目。
すぐに殺してもよかったのだが、
半ば鬼のようなその女を餌にする事に躊躇した。

男だ女だ、そんな事はどうでもいいんだ。お前は。
お前は、お前しか愛せない。

犯しながらそう吐き出せば、の反応が格段に良くなった。
それは俺も同じだがと小さく呟いたが、彼女には届いたのだろうか。

少し前に考えていた、女無惨話です
女無惨とやっていると思っていたら
途中にチソコ生えてたらマジビビるよね
ていうか乳があってチソコ生えてるっていう
二次元ではよくあるシチュなんだけど、
それって無惨なら有り得るって事ですよね…？
というマジでクソな妄想の具現化がこれです
あと、主人公がマジでとんでもねえ女で笑う

2019/06/09