あれはまぎれもなく恋でした









君に触りたいばかりに、こんな真似までしちゃったよとメメは笑った。
居所の定まらないこの男は、捜す事は難しい癖にやって来る頻度は異様に多い。
そもそもこちらこそ居所がばれないようにと
割とな頻度で移動を繰り返しているというのに、
何故この男にはばれてしまうのだろうか。
それが毎度不思議なのだが、
あえて聞けば藪をつつく羽目になりそうなので聞かない。
この男に付け回され始めて、もう少しで二年の歳月が経過する。



「…私、忙しいので」
「ダメダメ、休みなのは知ってる」
「…」
に会う為に、わざわざこんな所にまで来たんだから」
「勝手に来たのよ…ね?」
「そろそろ優しくして貰わないと」



流石に俺も限界なのだとメメは言う。
勝手に始め、勝手に限界を迎えられても困るわけで、
どうにかこの男を撒きたいが可能だろうか。
少しだけ様子を伺う。



「あたしとあんたって、そういう関係じゃないわよね?」
「だから、これから始めるんだろ?」
「いや、だから」
「俺はさぁ、二年。二年もを追ったんだぜ?」
「あ、はい」
「別に無理強いはしないけど」
「してるわよね?」
「君はさっきからあげ足を取ってばかりだ」



軽い口調で馴れ馴れしく話しかけて来るこの男は
軽薄な笑みをずっと浮かべている。
二年前から同じ表情だ。
そう。二年前。
今こうして又しても居所を突き止められ、本願に特攻されている。
そうして自分と言えば薄く笑い愛想よくいなす他手がない。
何故か。



「…何のつもりなの」
「満たされないんだ」
「だって、それが呪いだもの」
「知ってる」
「あんた、あたしから全部奪ったんだから、
 そのくらいのペナルティは受けなさいよ」
「こんな、恋みたいな呪い」



堪らないね。
メメの気配が膨らみ、策に溺れたのだと知った。
知ったが時すでに遅く、こんな狭い部屋の中で
二人きりだという事実を恨む他ない。



呪術師として随分昔から糧を得ていた一族の末裔であったは、
ちょっとしたトラブルに巻き込まれた。
地方政治家絡みのややこしい事件だ。
その力を封印し社会生活を営んでいたにとって、
青天の霹靂のような出来事であり、
初めて己の呪いで命を奪ったのがその事件だ。
半ば軟禁状態ではあったが、何不自由のない暮らしを約束されたのだが、
その未来はメメの出現により永遠に奪われてしまう。



「君の呪いはとても強力でね」
「そうらしいわ」
「術者が死なない限り解けないんだ」
「…」
「だけど、今俺は恋に落ちてる。まさに、、君に」



殺せないよね。
メメが近づく。ジリ、ジリ。
思わず座ったまま後ずさった。



「殺してもいいのよ」
「そんな事はしないよ」
「メメ」
「いいね」



もっと俺の名前を呼んでくれとメメは言う。
熱の籠った口調だ。
彼は今、完全に恋をしていて、きっと正気でない。
理性はとうになく、恋に操られている。



「きっとは気づいてるだろうけど」
「ちょっと」
「これは失敗だぜ」
「メ」



背が壁についた瞬間、右手を取られ口付けられる。
これではまるで呪いを返されたみたいではないか。
うっかり開けてしまったドア、たまたましていなかったチェーンロック。
メメ越しに存在するドアを見つめながら、少し前の偶然を呪うが意味はない。
メメの舌が唇を舐めた。
彼はまだ恋をしているのだろうか。





久々メメです
最初ちょっと解りづらいかなと思いますが。。。
恋という呪いにかかったメメ…!

2015/11/04

NEO HIMEISM