容赦もなく善良に正しい
常に命を散らす若者共を眺めながら、
それなりの言葉さえ吐きだせない。
何故ならこの身はまるで異なるからで、
何をどう告げようとも彼らは同じ力を持ちえないからだ。
神の声を聴くという触れ込みで名を馳せた幼少時、
人でない生まれのこの身は時の権力者の元で着々と力を増した。
自身の生まれは定かでない。
物心ついた時にはそこにいた。
己が人でない事は分かっていた。
朝廷付としてまるで生き神の如く扱われ、
貴族共はこぞってこちらの言葉を求めた。
この怠慢な生活の先に何が待ち受けているかだなんて、
そんなものは神でなくとも分かるだろうと思えた。
そんな折、一人の男と出会った。
とても繊細な眼差しの美しい男だった。
男は別にこちらの言葉は求めておらず、
こちらへ出向いたのも付き添いのような形だったと記憶している。
「さん!」
「よぉ、新入り」
「いい加減、名前覚えてくださいよ」
「だってお前たち、みんな同じに見えるんだよ」
「そんな事ある!?!?」
あの男は床に伏したという噂を耳にしたのは、それからすぐの事だった。
人の寿命は元より短い。
美しい時期も短いのだ、
それで帳尻が合うのではないかと思ってもいたのだが、
不思議とその男の事だけが気になった。
ある晩、月の大きな晩だ。
男の屋敷へ出向いた。
原因不明の難病という事で、男は離れに隔離されており、
使いの者は一人としていなかった。
男の肌は青白く息は浅い。
命の灯火はもうじき消え失せるだろうと感じた。
『…おい』
『…』
声をかけても反応はない。
やはりこれはじきに死んでしまうのだろう。
そう思い、その場を後にした。
「おい、」
「何だい、風柱」
「手合わせ願う」
「…やれやれ、又か」
「うるせェ、俺が勝つまでやるんだよ」
じきに死んでしまうのだろう、というこちらの目論見は外れた。
自然でない何かが起きたのだ。
男は夜を駆ける鬼と化し、と相反する生き物になった。
人を喰らうあれは禁忌だ。
二度と触れる事も出来ない。
互いに化け物だが種類が違う。
時代はゆっくりと変わりゆき、貴族から武士へと権力はうつった。
そのゴタゴタに紛れも姿を消した。
この身は永遠だ。
命の灯火は轟轟と燃え盛る。
「チビ共はそこで見てな」
「邪魔すんじゃねーぞ」
「はい!勉強させて頂きます!」
「いや、俺は帰りたい…」
今、ここでこうして鬼を狩る立場になったのも何かの因果だ。
あの男を忘れる事が出来ない己への戒めなのか、
神としての職務を放棄した罰なのか。
いや、そんなに大それた話ではない。
あの男はこちらの事を覚えているのだろうか―――――
たったそれだけの事が心に引っかかり、
どうしても身動きが取れないだけなのだ。
リクエスト分、鬼滅より無惨です
無惨出て来てないだろ、という話なんですが
無惨絡みでよく書きがちな、人でない主です
ちょい出しで風柱、かまぼこ達
2020/1/05