どんな碑もなく、名もない場所で
―――――まあ、別にお前を
どうこうしようって腹じゃあねェんだよ、俺ァ。
お前は確かに上物で、この俺が認めざるを得ねェくらいの玉だったし、
その力は世界政府にまでお前の名を轟かす。
この俺よりも先にお前は世界を手にしかけた。
そんなお前が躓いた原因は何だ?
なぁ、おい…。
愛だ恋だと詰まらないしくじりに捕まり、
まあ、その辺りでこの俺もお前の事を
只の女なんだと理解出来たわけなんだが、
だからってそいつは余りにも悪手だ。許されねェ。
そりゃあそうだ。この世界を手にしようって女が、
たかだか一人の男の為にその命さえ投げ打とうだなんて、
そんな馬鹿な話はねェ。
この俺だけじゃなく、ありとあらゆる権力者が殺気立った瞬間だ。
あの男は俺が殺した。当然だ。
「…あんた、まだ根に持ってるのね」
「喰えよ、流行りの店のモンだ」
わざわざお前の為に揃えさせたんだ。美味いぜ。
「食欲ないのよ」
「喰わせてやろうか」
「…」
「口、開け」
想定外だったのは、の落胆振りだ。
あのクズのような、何の存在意義も見いだせない男が死に、
彼女は自暴自棄となった。
何だよ、お前クスリでも盛られてたってのか。
そう聞きたくなる程に。
焦がれた女は何よりも自由で誰よりも強い
戦いの化身の如き神だったはずだ。
神は力を失わない。
人のような真似をするんじゃねェ。
自暴自棄な彼女を誰もが狙った。
そいつはこの俺も同じで、最後に勝利を手にするのは当然この俺だ。
世の理から見ても当然の結末だと言える。
ぼんやりしたを目の前に座らせ跪く。
こいつは俺からの贈り物だ。
気に入るといいが、そう囁き左手の薬指に飾る。
翌月には三連のネックレスを、
その次の月には大ぶりなピアスを。
を着飾らせる為に。
「…あんたのくれるプレゼントさ」
「うん?」
「毒みたいね」
「…」
キレイなんだけど、私を殺すの。
「その気になりゃあ、お前は」
「…」
海桜石で出来たそれらは彼女の力を奪いはするが、
その気になれば取り外す事も可能だ。
別にこちらはを拘束しているわけでもない。
銀の匙に乗せたスープを口元に近づけ注ぐ。
赤い舌が零さないように舐めとる。
だから、別に俺はお前をどうこうしようってわけじゃあねェ。
願わくばお前が正気に戻ってくれりゃあいいんだが、そいつは望み薄だ。
だってお前はここから逃げ出さねェ。
そんなもん、さっさと投げ捨てて逃げ出せばいいってのに。
俺の知ってるお前は自由だ。
何ものにも縛られない。
だけれど―――――
「…仕方のねェ女だ」
「…そう?」
「世話が焼ける」
俺がいねェと生きてもいけねェか。
髪を撫でそう嘯く。
そうかも知れないわね、と彼女も嘯いた。
久々ドフラミンゴです
焦がれてた女が男で躓くの許さない系男子
囲いながらも逃げ出す日を夢見る
割とロマンチストな男
2020/1/05