きっと僕は大人になっていく








あんたは絵に描いたような最低な男ね、
だなんて夜伽の間に言うものだから思わず笑ってしまった。
お前、こんなタイミングでよく言えたな、
そう言えば余り頭で考えて喋ったりしないの、
そう答えるものだから余計にだ。



このという女とこういう関係になり、
随分な歳月が経過したと思う。
元々は祖父が連れていた女だった。



「そういえばあんた、ようやく立会人になったらしいわね」
「…何で知ってんだよ」
「聞いたの」



誰に。
そんな事は聞かない。
藪をつつけば蛇が出るからだ。



この女が祖父の気に入りという事はとっくに知っていて、
それでも関係を続ける。
だから、だったかも知れない。
少なくとも最初の頃は。



ガキの頃からとても即物的な人間で、
欲しいものはどうしても欲しかった。
例えそれが目に見えないもので、手に取れないものでもだ。
祖父はくれなかったが、このはくれた。
少なくとも身体はくれた。
心は知らない。



「お前は?」
「あたし?」
「立会人になるつもりはないんだろ」
「そうだけど」
「今、何やってんの?じいちゃんの部下?」
「今は違うわよ」



この女は決して真実を口にしない。
曖昧に全てを濁す。
情事後の緩い寝具の中でさえもだ。
気持ちよくさせる為の心地よい嘘くらい吐けよと思う。



手を伸ばせばすぐに触れられる身体はそこにあるのに、
心はいつもどこにあるのだろうか。



「お前何やってんだよ、今」
「えぇ?何でもよくない?」
「俺の下につかねぇ?」
「えぇ??」



思わずが振り返る。



「何だよその面」
「あんたが変な事言うからでしょ」



思い返せばずっとこうして寝具の中で戯れていた。
限られた時間の中で。
そして夜が明け戯れの時間は更け、
巳虎の生活からの姿は消える。
とりあえずそういうものだと認識してはいた。



最初出会った時、この女は祖父の隣に無表情で立っていたというのに、
どうしてこちらの誘いは受けない。
だなんてそんな事はやはり口が裂けても言えないわけで、
どうしても忘れる事が出来ない身体にしがみ付く。



夜が明けるまで後三時間。
今日も心の所在は分からず、
ここにいるだけの身体に触れるだけだ。


最近書いてないかなと思って巳虎を、、、
じいちゃんコンプレックスここに極まれり

2015/11/19

水珠