ぼくらの為に終わっていく世界













夜が明けなくなってどのくらいの歳月が経過しただろう。
どうやら自分は巻き込まれたのだと知り、
どうしたものかと考えあぐねていれば目の前にこの女が突如現れ、
ああ、なるほどと納得せざるを得なくなったのだ。



この女―――――
は昔から何一つ変わらず、
今もこうしてトラブルをまき散らしながら生きている。
本当に迷惑で、心の底から顔も合わせたくない女だった。



「ちょっとー」
「何だよ」
「何でそんなにタラタラ歩いてんのよ」
「好きに歩かせろよ、別に急ぐ予定もないだろう」



この夜が明けない暗い世界には果てがない。
とりあえず壁を求め歩き続けているのだけれど、どうやらダメだ。
このまま歩いてもキリがない。
そんな事を考えている為、ゆっくりとした歩幅になっていたのにこれだ。



「お腹減ったし、とりあえず急がないと」
「俺は減ってない」



先程からは何事かよくわからない歌を歌っている。
そういえばこの女に初めて会った時にも
彼女は何事かよくわからない歌を歌っていたように思う。
この場合の【よくわからない】というのは、その歌詞の事だ。
どこの言葉か分からない言語、音、
そんなもので歌詞が構成されている。
だから【よくわからない】と表す他ないのだ。



「このまま進んでも、どうせ相変わらずの風景が広がっているだけだぜ」
「そうなのよ、本当に困ったわねぇ…」
「…」
「何よ、貝木。何か言いたげだけど」
「…お前は本当に困っているのかな、と思ってな」



立ち止まりそう言えば、軽やかな彼女の足取りも止まった。
ごと風景を今一度眺めれば、
そういえばここは随分と見知った場所だったのだという事に気づく。
雑踏、人々の群れ。ターミナル。24時間眠らない場所。
ざわざわと言語も分からない話声。
急に手を引かれた場所。
そう。このに。



「俺の時間を奪った代償は高くつくぜ」
「相変わらず愛想のない男ねぇ」
「お前の目的は何だよ」
「恋とか愛とか」



そういうもの。
が歌う。



「…言ってる意味がよく分からんが」
「この前、メメに相談したんだけど」
「…」
「二人きりになりたいなぁと思って」
「そういう事なら、答えはNOだ」
「はやっ」
「お前自体が怪異みたいなモンだろう」



俺は人としか交わらないんだと返す貝木に、
人なんて大嫌いな癖にと返す
この世界から光を奪ったのだろうか。
彼女は人だ。未だ辛うじてどうにか。



「お前みたいな女は、忍野みたいなタイプが好きだと思っていたが」
「望み薄な方に傾くのよね」
「とことん幸せに縁の遠い女だ」
「こんな事したって何の意味もない。時間と金の無駄だ」
「そんな事ないって」
「!」



見慣れたこんな街中でこの女は突如現れ、右手の袖を引いた。
丁度この場所で。
そうして今、まったく同じ場所で
彼女は腕を絡め圧倒的に挑発し始める。
どこで覚えたバカな真似だ。



「…それも忍野か?」
「そう」
「あきれ返るほど馬鹿な男だな」



だがしかし、確信を突いている。
身体を弄るの指を止める事もせず、
何となく空を仰ぐも満天の星空しか見えない。
腹を括る程の事でもないし、
あの男もどうせ一過性の発情だとでも思い、
こんな馬鹿な回答をしたのだ。
若しくはあの男の癖か。
まあ、それらに突っ込む気はない。



「俺に抱いて欲しいのか?それならこんな真似をせず、直接そう言え」
「ちょっと違うのよ」
「何?」
「今、あんたとそうしたいだけだから」



次もそうかなんてわからないでしょう。
等と嘯く女を担ぎ上げ、この怪異が終わっても問題のない場所へ向かう。
こんな街中で素っ裸で発見、だなんて真似だけは絶対に避けたいし、
そもそも自分にはそんな癖はないのだ。



この夜が明けない世界にはと貝木二人だけで、他には何もない。
こんな街中で致そうと誰も咎めない。
だけれどこんな世界にはまるで名残もないので、
とりあえず一度発射し、さっさと元の世界に戻ろうと思う。







メメの性癖が酷い(妄想)

2015/12/24

NEO HIMEISM