世界をつかむ事は出来たのか













まだやってんのかよと呆れた口調で呟いたキッドは、
手持無沙汰に指先を遊ばせた。
恐らく今日もいつものように仲間になれという話をしに来たのだ。



ファーストコンタクトからこれまでずっと同じ話ばかりを続けるこの男は
悪名ばかりを轟かせ邁進している。
彼の目指すもの、その道を考えれば当然の展開だ。
良し悪しは関係なく、順調な滑り出しだ。



そんな彼だから、どうしてしつこくも
こんな自分なんかに執着するのだろうと毎度不思議に思う。
仲間にするにしたって良い考えだとは思えないし、
人間性もどうだか怪しいところだ。



だってこうして昼も過ぎた時間帯なのに
昨晩と同じ服を着て化粧も落とさずに
ベッドの上で死んでいるような女だ。
とても哀れで空しい生き物。
自分でも分かっているのだ。



「起きろよ、。おい」
「…無理」



キッドが欲しいのは恐らくこの力であり能力だ。
キッドだけでなく、この世界の全てが欲する。
そんな力を後生大事に扱っていた時期もありはしたが、
そんなものも今は昔だ。



正直なところ、今はそんな事どうでもいい。
頭の中に一欠片でも残っていはしない。
今はとりあえず、何はともあれ、



「相変わらずか」
「…キラーもいるのね」
「酒臭いな…換気するか」
「酒だけじゃねェだろ、臭ェのは。
 お前まだヤってんだろ。バカじゃねェの」
「食い物も何もないな」



目を開けるのも億劫で、
こうしてやり過ごしていれば呆れたキッドは
帰るだろうと思っていれば、まさかのキラー登場だ。
部屋の換気、冷蔵庫のチェック。
これは早く帰らないパターンだ。



「おい」
「…揺らさないで」
「お前、依存してんだろ」
「…」
「とりあえず連れて行くか、キッド」
「そうだな」
「…!!」



ひょいと担ぎ上げられ暴れたいと思ったが、
確かに身体は動かない。
キッドの言う通り、この身体は相当喰われている。
気づいていた。
あの男はどうだか知らない。



「…どこ行くのよ」
「お前の知らねェとこだよ」
「困るんだけど、そういうの」
「うるせェ」



バカ女。
キッドの声がやけに耳に残り、昨晩の事を思い出した。
いつもの暗い部屋に二人で転がり込み、
酒と悪い薬に溺れセックスで〆る時間。



こんな関係じゃなく、こんな悪い素養は
早く失くしてしまいたいのだけれど侭ならない。
あの男は何を思って、何を考え私を抱くのだろうと思うが、
直接聞いた事はない。
大した答えは返ってこないと分かっているからだ。



キッドの小脇で揺れながらぼんやりと思いを馳せていれば、
連れて行かれたのは彼らの船であり、これは詰みだなと察する。
が、どうにも出来ないし、どうでもよかった。






今年初は何故かキッド(とキラー)でした
続きます

2016/01/06

NEO HIMEISM