全てを捨てたら命だけが残りました













ここ最近界隈で噂になっている【薬】の事は随分前から知っていた。
とある海賊が資金集めの為に作り出したものだという話だ。
いいも悪いもないが好きでなく、
俺達には関係のない話だと思っていればこの有様だ。
見事なカモがいたなんて思いもよらずマジかよとため息を吐く。



どうでもいい輩が薬を喰らい中毒になり死ぬのは別にいい。
勝手にしてくれと思うわけだが、如何せんこのに関してはダメだ。
許せない、受け入れられない。
兎にも角にもお前だけはダメだという話だ。



担ぎ上げたを船に乗せ、そのまま海原を走らせた。
これまでどんなに手を尽くそうと
この船に足を踏み入れる事がなかったは、
呆気なくそこにいるわけで、半死半生の状態で目を閉じている。



随分痩せた。いや、やつれたというべきか。
肌艶も悪く、髪もパサつく。
バカな女だ。



「もうじき着くぞ、キッド」
「あぁ」
「不思議なもんだな」
「…」
「あいつに頼るなんて」
「胸クソの悪ィ話だぜ」



この今にも死にそうな女は友達ではない。
初めて出会った頃からそんなものではなく、
なのにこの女は友達だと、そんなものだと思っているようで
そもそもが不快だ。
今だって昔なじみや腐れ縁だとでも思っているのだろう。



「おい、そいつ死んでねェだろうな」
「自発呼吸はしているぞ」
「意識は」
「朦朧、だな」



この女はこんな姿だったか。
こんなに無防備で情けない姿を晒すような女だったか。



「怖い顔だな」
「は?」
「元々強面だが、今の顔はそれの五倍は怖い」



今にも襲い掛からんばかりだとキラーは言う。
襲い掛かる相手はではないとも。
そんな事は言われなくとも分かっているわけで、
揺れに任せ身を崩すを横目に見ながらため息を吐いた。









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「意識がなくなってどの位だ」
「10分弱ってとこだ」
「チッ」



目的地に着いた頃だ。
それまで朦朧としていたの意識がなくなった。
辛うじて呼吸はしているがとても弱く、身体は冷えていた。
すぐにあの男の船―――――
潜水艦が浮上し、を連れ乗り込む。
敵船にノコノコと乗り込んでいる事態が笑えた。



主であるトラファルガー・ローはすぐにの容体に気づき、
不快そうに舌打ちをした。



「末期じゃねェか、おい」
「俺に言うな」
「離脱も楽じゃねェんだぞ、こんな状態で」
「こんな状態で生きてるくらいなら、死んだ方がマシじゃねェのか」



ローが言いたい事は分かっている。
何故こんな状態になるまで止めなかったのかと、それを言いたいのだ。
この女が人の言う事なんて聞くわけがないと知りながら。
確かにここまで落ちぶれるかと驚いた。
どこまでも堕ちるのだと知った。



こんな状態のこの女を好きなように利用される位なら、
いっそ止めを刺した方がいいのではないかと考えた。
余りにも哀れで。



「おい、べポ。俺は今から処置に入るから―――――」
「何だよ」
「お出かけか?」
「見ての通りだ。一々聞いてんじゃねェぞ」
「早くても三日はかかる。ゆっくり用事を済ませて来な」



白衣を身に付けながらローはそう言い、忙しなく別室へ消えていく。
とりあえず目的は果たしたのだ。
居心地の悪い他人の船をすぐに降り、自分たちの船へ戻った。









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「…ようやくのお目覚めか」
「えぇ…」
「あいつらに感謝するんだな」



目覚めればそこにローがいたわけで、最悪だと思っただけだ。
一瞬記憶を全て失ったのかと思ったが、
数秒のブランクがあり徐々に思い出した。



キッドだ。
キッドとキラーに拉致られた。



「ちょっと…何よこれ」
「動くな、死ぬぜ」
「えぇ?」
「離脱のショック状態から抜けたばっかりだ。安静にしてろ」



ローはそう言い、例の白熊呼んでいる。
動くなと言われても全身に力が入らず、動く事が出来ない。
左腕に刺された点滴の針がとても疼くが
口を開く気にもなれず目を閉じる。
キッドはいなかった。





うえーいキッド&キラーとロー絡ませたったわー
こういうの夢って感じがとてもするわー
後編かと思いきや中編になってしまいました

2016/01/12

NEO HIMEISM