その酷く曖昧な輪郭に絞め殺される









このまま帰るだなんてまったく詰まらないんじゃないかとメメは言うわけで、
その何が詰まらないのか聞いても納得出来る返答は頂戴出来ない。



怪異を目の当たりにし瞳孔の開いたメメは
こちらの制止も聞かずに首を突っ込み、
散々気ままに暴れまわった挙句のこの台詞だ。
知ってはいたが身勝手な男だと思う。



こんなビルの屋上で唯一の出入り口を塞がれたまま、
身勝手な男の至極真っ当な会話を聞かされ続け一時間弱。
乾き続ける唇を撫で、ため息を吐いた。



「…いい加減、そこ、退いてくれない?」
「どうしたんだい、。これから楽しい時間が始まるってのに」
「始まらないわよ。そんな無駄な時間ないわ」
「折角こんな場所まで来たんだ。君は遊ぶさ」



必ずね。メメはそう言う。



「そういう誘い方って、流行ってるの?」
「?」
「貝木も、似たような事言ってたから」



そう言えば苦笑し、彼の癖だ。
口元を触りながら少しだけ俯いた。
そんな姿を見れば、何故だか数年前の記憶が突如として蘇り、
世界がセピアに染まったようだ。



まだ互いに学生だった頃。
経験も少なく、今考えれば初期対処も間違えていたのだろう。
酷く手こずり、状態は圧倒的に悪化した。
メメの助けが必要なほどに。
ズタズタに裂かれる寸前、掴まれた腕。掌。温かさ。
一瞬にて恋に堕ちそうだと錯覚したが、馬鹿な真似だと自嘲した。
あの頃のメメはこちらに等まるで興味がなかったようで、
借りだけが暗黙の了解の上持ち越した。



「どうしたのよ、そんな、今更」
「…えぇ?」
「あたしに興味なんてなかったでしょ」
「いや、そんな事は―――――」



こちらを見る。
目だけで。



「只、このままお別れじゃ、余りにもつまらないだろう?」
「いかがわしい顔してる」
「酷いな。元々こんな顔してるぜ」



メメが又、口元を触った。
つられても唇に触れる。
似た行動でも思惑は別で、男の眼差しを目の当たりにし一歩後ずさった。
獲物を狙う肉食獣のような眼差しを向けられるのは
怪異だけではなかったのか。
いや、若しくは。
自分自身はいつしか怪異に成り下がったのだろうか。
この男にとっては。



「初めからやりなおしたいだなんて、言わないよ」
「!」




只、堪らないだけなんだと彼は囁き、ジリジリと近づく。
フェンス下、五階建てのビルディングから飛び降りるのも得策ではなく、
もうじき背にあたるフェンスの感触を想像しながら、
メメの眼から目が離せないでいた。




久々メメです
というか、久々の更新です、、、
忙殺されてたらノートのACが壊れててさ、、、

2016/3/22

NEO HIMEISM