そんなにきれい好きでもないでしょうと嘲り、
あの女は心に侵入してくるのだ。
毎度毎度同じやり口で。
頭では分かっているのに心を少なくとも僅かばかり握られている為、
まんまと招き入れてしまう。
こんな事は決してよくない真似だ。
道理もないし、そもそも頭が悪すぎる。
南方に知られようものなら、死ぬまでネタにされる事案だ。
知られてはならない、許してはならない。
あの女の縦横無尽を決して許してはならない―――――
そんな事はとっくに理解っているはずなのに、
いそいそと部屋を片付けだした自身が何より情けなく、
こんな自分にガッカリだ。
襲い掛かる一報の第一声。
他の女と間違えてるとこ悪いけど。
いや、お前。
そんな事を気にしたためしがあるのかと。
こちらの事情などお構いなしに襲い掛かる癖に、
何をいけしゃあしゃあとほざいていやがる。
チラリと時刻を確認。
まだ後、10分は残っているはずだ。
俺は、一体、何を。
とりあえず煙草に火をつけ落ち着かせる。
前回の襲撃は八ヵ月前。
海外に出向する直前だった。
互いに賭朗に所属する身だ。
命の価値は大してない。
保証など論外だ。
だからこんな生き方をしているのだと、
どうにか自身を納得させていたが。
がこんな真似を繰り返している事も知っているし、
別にここだけじゃないという事も分かっている。
いつもの調子でこの部屋に入り込み、
我が物顔でくつろぐであろう姿さえ容易に想像出来る。
だからあの女は断られない事も分かっているし、
それに相応しいお土産さえも持ち合わせる。
他に類を見ない欲望。
すぐにぐらつく。
分かっている。
俺は、あの女には、勝てない。
着信からの到着に時間がかかっている事さえもやけに不安で、
部屋の中を行ったり来たりと猿のようにうろつく。
ようやくのインターフォン、オートロックの解除。
室内の照明を消し、ここでしか使用しない間接照明をオン。
自室の癖に非日常の演出。
完成はの到着。
完璧なタイミングで開錠したら解り切った誘惑が侵入。
「どうしたのよ、雄大」
「あ?」
「そんな、怖い目して」
隠す気もない欲望を見透かされ、恥じらうつもりもない。
気づかない内に又、新しい煙草に火をつけている自身に気づき、
今回も負け勝負なのだと、笑った。
【挑発か、誘惑か】の続き?です
続きというか、同主人公
物語が始まらない二人
2016/8/14
NEO HIMEISM
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