泣けない子の嘘、



泣かない子の見栄











話にならねェと吐き捨てた土方は
先程から延々と煙草を吸っているわけで、
もうこんな所にいたくないと溜息を吐き続ける
の横から離れようともしない。


苛立ち先に席を立とうとしたが、それさえも叶わない。
まだ話は終わっちゃいない、だなんて
冗談みたいな嘘を真顔で言うからだ。
ご丁寧にも左手を掴んだまま。
これでは身動き一つ取れないわけで、
話にならないのはこちらの方だと腹の中で呟いた。


今更真摯な態度で、だなんて到底無理だ。
気恥しいし、つもりもない。
幾度かの楽しめた夜。
そんなものを思い出として同じくやっていけばいいのだ。


本当の事を知りたがる癖に、いざ手にするとなると怯える。
その場その場で楽しめるような軽い嘘を重ねたが、
それは罪に問われるような事なのか。
そんなものは、物心ついた子供誰だってやってるわよ。



「何が気に入らねェ」
「そんなの、そっちでしょう」
「いいや、手前だろう」
「あたしは何も求めちゃいないじゃない」
「そりゃあ、そうだが」
「って事は」



随分飽き飽きとした表情のは心ひとつ動かさない有様で、
正直なところ身動きが取れなくなっているのは
こちらの方だと分かっている。
これまで重ねた幾つかの逢瀬。


そりゃあ確かに最初の数回は惰性というか、勢いというか、
何も考えていなかったのだけれど、
回数を重ねれば情が生まれるってモンじゃねェか。
日付が変わるタイミングで切り出そうか、
いや、今日は日が悪いか、だとか。
ならばこれまでは何だったのか、
そう言われれば返す言葉もみあたりゃしねェが。


だからといってきつい言葉で突き放しても意味がないし、
恐らくには響きもしない。
こんなにみっともない真似をする羽目になるとは、まさか。



「あたし、銀ちゃんに呼ばれてるからさ」
「はあ?」
「何か、みんなで飲んでるんだって。
 近藤さんもいるみたいだし、トシも来る?」
「…」



こんな思いを知られるわけにもいかないし、
だからといって手放しも出来ない。
半ば気づいているはずだが、
核心に触れない限りこの女は素知らぬ振りを貫く。
掴んでは消える陽炎のように。


だから日付なんてとっくに変わっているし、
の姿はもうここにない。
先程まで無理に掴んでいた腕の温もりだけが心なしか残り、
今日も欲しいものだけがこの手をすり抜けて行く。



銀魂祭(心は全蔵)の勢いに乗り、
死ぬほど久々に土方さんを書いてみました
何となくですけど私の中の土方さんは
事女関係に関して割と女々しいというか、
まあ、こんな感じのイメージです

2017/2/20

水珠