どこまで強情を張るつもりかい











爽やかな朝だ。
薄く青い空はどこまでも広がり、雲一つない。
冷えた空気が頬を刺し、それなのに眩い日の光は降り注ぐ。
小鳥は鳴き遊び、これは一点の曇りもなく、最高の朝だろう。



「おっ…おはようございます!」
「…」



そんな朝にも関わらず、
ほぼ目を閉じた状態でフラフラと歩いているのは、土方だ。
最悪のコンディション、簡単にいうと、
とんでもない二日酔いという状態で歩いている。



理由は一つ。
待ち人がこなかったからだ。



彼女を待ち、一杯、二杯とグラスをあける内に収取がつかなくなり
(それは心も身体もだ)気づけば散々酒をかっ喰らった後だった。
もう閉店だと泣きそうな顔で懇願している親父を前に、
この数時間の記憶さえないと思いながらもどうにか席を立つ。
足元がふらついた。



まあ、何はともあれそんな状態で屯所へ戻った土方は
不機嫌そのものという表情を引っ提げており、
部屋に声をかける事も出来ないが、
挨拶をしないわけにはいかないというジレンマを
部下たちに植え付けていたわけだ。



「あ〜〜〜気持ち悪ィ…」
「あれ?副長」
「んだよ山崎…」
「昨晩はお楽しみだったんですかぁ?」
「あぁ!?」
「な、なんで」



一先ず、地雷原を踏み抜く山崎を締め上げ、奥へ進む。
どうにも取調室の方が騒がしい。
大きな捕り物でもあったというのか。
騒がしい方へ進めば、
取調室を覗き込んでいる近藤が目にはいった。
相変わらず妙な真似を―――――



「近藤さん」
「トシっ!」
「何してんだ?そんなとこで」
「いやっ、そのっ!」
「随分威勢のいい罪人だ、どんな面ァしてやがる―――――」



ひょいと覗き込めば、そこには
掴みあいの大立ち回りを繰り広げると沖田の姿があった。









■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■









互いが肩で息をしている状態だ。
昨晩ここへ来てから一睡もせず、こうして命のやり取りをしている。
タイムリミットまではもう30分を過ぎた。
手段など構っていられない状態だ。
中々どうしてこの沖田という男も随分手強い。
動悸がこんなにも詰まらない事でなければ、
もっと素直に楽しめたのかも知れないが、
今回は余りにもタイミングが悪すぎる―――――



「そこ、退きなさい!!」
「そんなに通りてェんなら、力づくで退かしてみろィ!」
「この、クソガキ!!」
「来いよ、アバズレ!」
「手前ら、何してやがる!!」
「!!!」



間髪入れず突入してきた男を見上げる間もない。
沖田の頭上に鉄槌を喰らわせたのは土方だ。
何もかもが最悪の方向へ向かっている。



「何しやがるんでィ、土方さん」
「手前は何をしてやがんだ!」
「俺ァ、このアバズレを連行しただけでさァ」
「アバ…!?」
「いいから、早く解放してよ!」
「!?」
「昨晩、待ち惚けをくらった土方さん!」
「うるせェよ!」



それこそ手前のせいなんじゃねェのかと吐き捨て、
どうにか沖田を追い出した土方は、の目前に立ち尽くす。
勢いのままこの部屋に飛び込みはしたものの、
これはとても気まずい再会だ。
何せ昨晩、実際に待ち惚けは喰らった。
は来なかったのだ。



「…あの」
「おぅ…」
「とりあえず、」
「何で昨晩―――――」



ぎこちない口ぶりで拙い会話をどうにか続けようと模索する。
互いに、目さえ見ずに―――――



「ちょっと、失礼しますよ」
「!!!」
「ちょ、勝手に上がられちゃ困りますよ佐々木殿…!」
「これは失礼。私の部下がご迷惑をおかけしていると聞き、
 大変焦ったもので」



ねぇ、
まるで空気が止まったように微動だにしないは、
只、突然乱入して来た佐々木を見上げていた。




前回、まったく土方さんが出て来なかった話の続きです
ようやく土方さん出せたんですけど、、、
まあ、まだ続きます

2017/2/27

水珠