消えてしまいそうな



月になりたい








それにしたって杜撰なあの女は
延々と下らない会話を紡ぎ続け、
折角のこんな一日さえも、
いつも通りの惰性に塗れた日々に組み込もうとしている。



彼女の下らない話は今に始まったものではないし、
基本的に意味のあるような会話はしない。
それはまあ、にしたって、誰にしたって同じだ。



時間は当に夜半を過ぎ、身体は散々アルコールに蝕まれている。
指先の感覚はないし、記憶もあやふや。
少しばかり頭痛も喰らう。



それもこれも、先程から下さらない会話をこちらではなく、
全蔵やお妙たちに話しているこの女のせいではないかと、
やはりそう思うわけだ。



真向いに陣取っているにも関わらず、
視線を一切寄越さない不自然なこの女のせいではないか。
まあ、その態度に関しての理由は分かっている。



「…厠で待ち伏せ?」
「だってほら」
「こっちの出方は分かったでしょう、銀時」
「ほら出た。あんたがそうだから、
 こっちはこーんな手に出る他ないでしょ」
「酔ってるのね」
「いーや、酔っちゃいねェよ」



だから話を聞けとでも言うつもりか。



「遅くなると怪しまれるでしょ」
「いーんだよ」
「無理」
「このまま戻んねェんだから」
「はぁ?」
「俺も、お前も」



二人でドロンなんだよと呟く銀時はの手首を掴む。
こうして酒の席で姿を消し、翌日には素知らぬ振りで日々を暮らす。
誰もが何となく察し、そして触れない。
こういう遊びは性質も良くない。
心も体も疲弊する。



「ちょっと、銀時」
「何よ」
「もう寝ないの、ないの」
「えぇ?」
「こういうの、もうやんないの」
「何それ、いつ決まったの?それ」



逃れられない身体は、銀時に掴まれた右手を中心にクルクルと回る。
酷く近い距離で彼はジクジクと囁くのだし、
もう少しで接触しそうな唇から逃げ回るのでさえ一苦労だ。



こういった時にしか出来ない戯れ。
その事に疲れたのだと、銀時は知らない。
伝えたところで理解も出来ないだろう。



疲弊する癖に捨てる事が出来ない自身の咎だと知っている。
強く押し切る事も出来ない癖に、拒否する資格もない。
銀時の唇が、耳元で囁いた。



酒の席でガンガン過ちを犯す男、銀時です

2017/03/13

NEO HIMEISM