声にしないのが


優しさだって


気づいてたよ









課された任務は毎度の事、悪趣味の極みであり、
それに対する嫌悪感などとうに失せたはずだ。
これまで首に枷を付けられたまま生きてきたのだ。



命を天秤にかけ、辛うじて生存させた選択肢。
それを良しとしなければあの時に命は散っていたのだろう。
直接聞いた事はないが、そう考えている。



ドフラミンゴの駒として、どうにか生存を許された。
何もかも全てをあの男に委ね、
あの男の為にのみ生きる事を許された存在。
利を与えなければ意味がない。
己の意思は不要なものとなり、感情も消えた。
はずだったが。



「…
「!」
「お前」
「嫌だ、何で、ロー。どうしてここに」
「死ぬぞ、バカが」



消え失せたはずの感情とやらが僅かばかり残っていたらしい。
その結果がこの様だ。
必死に逃げてはいるものの、この狩からは逃れようがない。
少しずつ異なる深さの


傷をつけ、この身体から血液を奪う。
執拗に追い詰め、命乞いを待つ。
弱者は当然奪われるのみなのだと男は言う。
それが嫌ならば強くなれと。
強さを持てない己を恨めと。



どう足掻いてもあの男に勝つ事が出来なかったのだ。
何もかもすべてを奪われ、
惨めにも生殺与奪の権までも握られ傀儡のように生きざるを得ない。
それを良しと出来なかった。理由は。



「何で、ここに」
「ドフィが哂ってたろ」
「…」
「バカが、あいつにはいい顔してりゃよかったんだよ」



お前はお前の為に生きてりゃいいんだ。



「…知ってたのね」
「まぁな」
「今、狩られてるわ。あたしといる事が知れたら」
「いいから黙ってろ」



心を奪われただなんて彼には通用しない理由だ。
お前の心も身体も髪の毛一本でさえも俺のものなんだよ、
手前の自由になるものなんざ一欠けらもねェ。
そんな事は今更言わなくったって、よぉく理解してるはずだよな。
それなのにこいつは一体全体どういう様なんだと、
彼は激怒したわけで、そんな彼の圧倒的な覇気を喰らい
気を失わなかっただけでも御の字だ。
心はない癖に、ものに対する執着心ばかりは尋常でない。



「今回ばかりは殺す気みたい」
「傷口だけ見ても、どうやらそのようだぜ」



ローの一挙一動を全て余さず伝える日々に嫌気がさしただけだ。
じっとりとした眼差しを持つこの男の印象は最初から最悪だったが、
言葉少な目に語る何気ない会話は気に入った。



自身の哀れな境遇をどうにか隠し、偽りでも構わないそこだけの夢を求めた。
心が通ったとは言わないが、身は交えた。
何も変わらないと思っていたが、
交えた先から痛みが増し、心が削り取られる。



「お前は逃げろ、ここにいてもいなくても死ぬだけだ」
「そうね」
「俺もじきにここを出る。忘れろ、全部」
「…」



その場しのぎの応急処置を終えたローは
の返事を待っているのだろうか。
また会おうだなんて再会の予定も立てず、
二人の未来など、どこにもない。
そんな事は分かっていた。



分かっていたはずの衝撃だ。
だけれど。



「一緒に逃げて、なんて」



叶わないとしても言わせてよ。




ドフィとローの過去を聞きかじり、
その関係性がとても気に入ったのです。
なので、暫くこういう絡みの話が増える予定。
シチュ萌えって、、、あるよね

2017/03/13

NEO HIMEISM