迷えばいつか目的地に着くと思ってた



(それはきみがいたからなんだね)




すれ違いざまに刃を向けられ、通り魔かと思えばだ。
知った顔で驚いた。
知った顔で驚いたというよりも、
死んだと思っていた知っている人間で驚いた。



「あっらぁ…
「全蔵…」
「生きてたの?」
「殺す!!!」



小刀を振りかざす目前の女は
五年前に死んだはずの女だ。



「いやぁ、本当、俺も心配してたとこでさ」
「抜かせ!!」
「本当、本当、本当だって!」



忍びあがりでない女だった。
始末屋の仕事で初めて顔を合わせたのが、例の五年前。
可愛げのない可愛い女だった。


今思えば若さ故か、こちらも名を上げたい一心で、
真正面から張り合い、自分でいうのも何だが
最高のコンディションを保てたと思う。


の助言は何一つ聞かず、割と無茶も通した。
後始末はがすると分かっていてだ。



「けど、なぁ、!」



逃げ回り、一定の距離を保ち言う。



「あんな真似しちまった俺に会いに来たって事は―――――」



好きなんだろ、俺の事。
何故か彼女に対しては、
どう転んでも逆なでするような言葉しか吐く事が出来ないでいる。
今も昔もだ。
その上、間違ってはいないような気もしているわけで、より性質が悪い。



「あんた、よくもそんな事言えたわね」
「だってそうだろ、お前、俺のせいで死にかけたってのに」
「そうよ!!」
「こうしてわざわざ会いに来るってのは」
「殺しに来たんですけどー?!」
「えぇ!?そうなの!?」



そうしてくれと、ずっと思っていた。
いつか俺を殺しに来いと。
あの時、こちらが強硬手段に出たばかりに、
奈落へと滑り落ちた彼女。
まさかそんな展開が待ち構えているだなんて想像もしていなかった。



「こんなとこで立ち話も何だし、あっそうだ。俺ん家来る?」
「…!!」



こんなくだらない俺自身を赦せるのはお前しかいないのだと、
その事には気づいているのだろうか。
赦されたいのだと願っている事を知っているのか。


はやり場のない思いの拠り所を捜している。
内容こそ違えども、それは俺も同じなんだぜと、
そんな言い分は通用しないか。











大好きな全蔵ピンを書いてみました
基本的に後悔する振りをしている男が好きです
全蔵好きなんじゃあ〜〜〜

2017/3/18

なれ吠ゆるか/水珠