振り翳したちっぽけなプライド













基本的に目覚めは悪い。
寝起き一時間はロクに動けないし、頭もぼんやりと鈍っている。



しとしとと雨音が鳴り響き、部屋の中にじっとりと湿度が蔓延したその日。
目覚めるとの姿は消えていた。
シーツの冷え方を見る限り、寝入ってすぐに出て行ったのだろう。
寝つきもいい方ではないのだが、今回に限っては気づかなかった。
薬でも盛られたんだろう。
そのくらいの真似は仕出かす女だ。



持ち合わせた低血圧のせいなのか、
盛られた薬のせいなのかは分からないが、全身が酷く気怠い。
が消えてしまった理由を考えるが、
心当たりが多すぎるからか一向に考えは纏まらず、
もう一度、枕に向かいダイブした。









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こんな場所にいやがったのかと、ずぶ濡れの男はそう吐き捨てた。
散々酒に酔わされた状態の頭だ。
理解は出来ないが反射で顔を上げる。
スタスタと滴が目と鼻の先に滴り落ち、それを辿って顔を覗き込む。
びしょ濡れのフードを脱いだ男は軽く手を上げ、バーテンを呼んだ。



「…何してる、こんな場所で」
「何って…飲んでんのよ」
「一人か」
「一人…ねぇ」



あんたが来るまではそうじゃなかったけど。



「あんたこそ、何してるのよ」
「お前を捜してたんだよ」
「嫌だ、どうして」
「そう、露骨に嫌な顔、するもんじゃねェ」



手を伸ばし重ねる。
一つも躊躇せずに。



「…何の真似よ」



何も答えず、グラスを手にした。
乾杯を催促しているのだ。
ぼんやりとそう思い、
すっかり温くなった飲みかけのグラスを指先で掴んだ。



「何で消えた」
「理由も分からない癖に、よく捜したわね」
「今更、良心が痛むもないだろ」
「何?」
「ずっと裏切ってた癖に、今更じゃねェか」
「…」
「ドフィに俺の情報を売ってただろ、お前」



答えず、一先ず一気に煽る。
指先でグラスの縁を叩き、すぐに注がれる琥珀。



「そこまで知ってて、どうしようっての、あんた」
「嫌な気持ちになったんなら謝るぜ、。そういうつもりじゃねェ」
「…どういうつもりよ」
「何が問題だ?俺の情報さえ売ってりゃ、金にゃ不自由しねェはずだ。
 ドフィがみすみすお前を手放すわけがねェ。
 なぁ、。どうして急に俺から去った」
「別に理由なんて」
「揺れたか」
「…」
「ドフィは、許さねェだろうな。あいつは執着心が人一倍強い」



そういうお前は。
ここまできてようやくローを視界に入れる。
どうやら男はこれまでずっとこちらを見つめていたようで、
射貫くような眼差しに息を飲んだ。
知れたかは分からない。



「そんなのは、あんたも同じじゃない」
「あ?」
「執着心の塊みたいな男の癖に」



あんた達よく似てるわ。
そう呟いた後、だから逃げられないのだと飲み込む。



こんな真似をして、何れ罰があたるのだと分かっている。
心を弄び何事も起こらないわけがない。
そもそもが役不足なのだ。
私はあの男のようにはなれない。



「…許してくれなんて言うつもりはないけど」
「あぁ」
「今更どうも出来やしないのよ。生き方も、何も、これからも、ずっと」
「変えろなんて言わねェさ。そこまでおこがましくないぜ」
「…あぁ、そう。そうね。分かったわ」
「…」
「苦しめって事なのね」



狭間で心を弄び、許されない咎で苦しめという事なのだ。
抗えず変える事も出来ないのであれば、
そんな惨めな己を戒めろと目前のローは告げている。
逃げる事は許さないと。



一気に酔いが回りそうで、グラスが指先から滑り落ちた。
固い音を立てテーブルに転がり、ヒビ一つも入らない。
何も変わらない自身のように。






今回の更新分は共によく喋る
最近のマイブームは
とりあえずドフィとローを絡ませる事です
恐らく世間の流れから数年遅れている

2017/04/08

NEO HIMEISM