失意の中、殺戮の果てに
疲弊し薄汚れた調査兵団を見つめる人々の眼差しには、とっくに慣れ切っている。
事実なんてものは結局、目の当たりにした者のものでしかない。
そもそもが天涯孤独の自分のような人間ばかりではないのだし、
不思議な事に各々に生存を心配する人が存在するらしい。
そういった人々の待つ人間から死んでいくのも不思議な話だ。
そうして今回の壁外調査でも生き延びてしまった
自分という人間にはさして価値などない。
諦めや羨望、不満や侮蔑。
そんなものの含まれた眼差しを受けるこの人込みの中、
毎度の方向から触れる指先。
まるで理のように繰り返される戯れ。
誰も知らない秘密の遊び。
とりあえずの体で催される食事会に顔を出し、口先だけでもいい。労う。
喰われ死にゆく仲間を目にした同胞を慰め、労をねぎらい、悲しみを共有する。
それが当然の成り行きだからだ。
それ以外の方法はまだ知らない。
そもそも心はそこにはない。
そんなものは、どうやら昔から。
味もしないほど強いアルコールを数杯飲み干し、何食わぬ顔でその場を去る。
どうやら自分という生き物は他と違うらしい。
命のやり取りをし、只、喰われず生き延びただけの癖に、どうしても滾る。
全身の血液が沸騰しそうなほど感情が逆立ち、興奮冷めやらぬといったところだ。
種の生存本能といえば多少は聞こえがいいのか。
唯一の救いは、そんな獣のような生き物が自分一人ではなかった事だ。
「遅ェ」
「中々、抜けられなくてさ」
「俺を待たせるなんざ、覚悟は出来てるんだろうな」
「何よ」
そんなにいらついて。
「そう時間もねェんだ、さっさと」
こっちに来いと急かすリヴァイは、今のところ随分と興奮している。
そうして急かされるも同じだ。
互いが互いに、互い以外の事で興奮し、
その滾りを致し方なく互いで発散している。
幾度目かはもう忘れた。
酒臭い吐息のまま貪るように口付け、まるで無駄なく衣服を脱がす。
こんな真似をしている自身を、リヴァイはどう思っているのだろう。
こちらは、そんな異常さにほとほと嫌気がさしている。
嫌気がさしてはいるが、だからといってどうする事も出来ないのだ。
こうして身を収める他、方法を知らない。
「…どうした、気がねェな」
「気にしないで」
「集中しろ」
リヴァイの舌が首筋を舐め、軽く噛む。
全身が総毛立つ感触に思わず声を漏らす。
身体は興奮しっぱなしで、とっくに迎え入れる準備は出来ている。
この、得も言われぬ欲望を解消する為に心はどこかへ消え去った。
良心も、罪悪感も、何も。
物心がついた頃にはとっくに一人で、
この世に神などいないと知る子供だった。
余裕のない大人達にいいように扱われ、
虐げられ奪われ、辛うじて生きているだけの存在。
それから数年で学んだ。
何かを求めるような真似はしない。
出来る限り息を潜め、自身に害が無いよう周囲に目を光らせる。
打算的で可愛げのない子供だった。
「―――――っ、ぁ」
「声出せ、」
「は、ぁ」
リヴァイの胸に唇を押し付け声を殺しても、
彼の耳側で熱っぽく喘いでも同じだ。
それはそれで只の音となり、決して男の胸には届かない。
今この時だけの興奮を排泄しているだけだからだ。
この小部屋で繰り返し行われる意味のない遊びは心を消していく。
畏怖せず、飢え、命を晒し、滾らせる。
恐らくいつか死ぬその時まで変わらない。
少なくともこちらが死ぬまでは。
覆い被さるリヴァイ、身を挟む両腕、胸元につけられた額。
滴り落ちる汗。
身を貫く性器は疼く個所を的確に捕らえ、それ以外の何もかもを奪い去る。
今回も生き延びた、まだ生きている。
まだ許されない、こんな、自分なんてものは。
悲しめず怯える事も出来ないは、
その理由も知らないまま、身を削りゆく。
神様などいないからだと、リヴァイは笑うだろうか。
初リヴァイです
ずいぶん分かりにくい話なんですけど、、、
ええと…セフレ?
2017/4/13
なれ吠ゆるか
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NEO HIMEISM