ガラスの女王











顔を合わせれば浅ましくせがむの脳はきっと溶けている。
それこそ職務中だって厭わないし、
敵地の真っただ中でさえも彼女にとっては意味がない。



何がそんなにそそるのか(我ながら、だ)
いつだって発情しているあの女が
何のつもりなのかは未だ分からない。



正直なところ、自分だけでなく誰とでもそうなのかと考えていたが、
自惚れでなく自分だけのようで、やはりそれはそれで謎は深まる。



大して会話も弾まないし、
ひととなりなんてまったく知らない間柄なのに。



「ちょっ、ちょ、
「何よ」
「お前、ここはマズイって」
「今更何よ」
「あっ、ちょっ」



そうして今。
敵地の真っただ中でに襲われている。
彼女の大好きなシチュエーションだ。



分かっていたから、接触しないように極力気をつけていたのだが、
目標として捕らえられてしまったのだ。
彼女のサーチから逃れる術は今のところない。



壁を一枚隔てて、敵がうじゃうじゃといるというのに、
どうしてこの女はこちらの全身を弄るのか。
遠慮なく性器を撫で、吐息で犯す。



もう為すがままで、ちょっと、いや大分、
困っているのだが本気でない為、大した抵抗もしない。
こんな、どうしようもない女が嫌いでないのだ。
そりゃあ確かに、多少困っちゃいるが、
でもそんな、嫌いになるわけではない。



いやらしい事は好きだし、いやらしい女も好きだ。
だからきっとの事を好きなのだ。
だけれど伝えない。
行動に理由が認められない女に愛の告白だなんて、
恐ろしくて出来ない。
身体だけでいいのよ、なんて言われてみろ。
立ち直れやしない。



だから参っている。
手も足も出ない。
八方塞だ。



の唇が全蔵の首筋を這い、
上ずった吐息が室内に木霊する。
そういえば、こちらから抱き締めたりキスしたり、
そんな当然な真似をした例がなかったな、
だなんてどうでもいい事を考える。



だからこれは愛ではない。
恐らく恋でもない。
今にもそうなりそうなのに、何故かそうならない。
誰のせいだろうか。



「なぁ、
「…何?」
「お前、俺の事―――――」



好きなの。
そう聞く直前に強く握られた性器。
の手中で実に固くなる。
言葉さえ奪われた。



詰まらない事を言ってる暇があるなら、とっとと触ってよ。
はそう囁く。



一世一代の愛の告白は無残にも失敗。
暫くの間、埋まる予定のない心の穴には、
記憶にも残らない気持ちよさを詰め込む算段だ。




久々に書いた、本当どうしようもない主人公です
私は全蔵が好きなのです
仕事の最中に現場でこんな事してるだなんて
さっちゃんもビックリですわ

2017/4/23

水珠